20001205

長崎 広範な国民連合第8回総会

吉元・元沖縄県副知事が記念講演
市長(代理)、社民、民主党などがあいさつ

「安保はいらない 自主外交を」打ち出す


 自主・平和・民主のための広範な国民連合第八回全国総会が十一月二十五〜二十六日、長崎で開かれた。朝鮮半島情勢の大きな変化、日米関係をめぐる動きなどのもとで、わが国の進路はいっそう重大な岐路にさしかかっている。この時期この総会が、全国からの賛同人の討論を通じて「安保はいらない 自主外交を」という方向を決定したことは、非常に意義あることである。政治変革をめざして広範な国民各層の政治的連携を強め、国民運動の組織者として、国民連合がいっそう役割を果たすことに期待が高まっている。


 自主・平和・民主のための広範な国民連合第八回全国総会には、約三百人の労働者・市民が参加して盛況のうちに開かれた。
 開会あいさつを行った本島等・総会長崎実行委員会委員長(元長崎市長)は、「かつて日本軍は、アジアで多数の暴行を行った。私たちはもっと、日本の新しい生き方を考えなければならない」などと、自らの市長時代の経験も紹介しながら、わが国のあり方について呼びかけた。
 議長団就任後、伊藤一長・長崎市長(代理)、野口源次郎・長崎市議会議長、林虎光・在日本朝鮮人総聯合会長崎県本部委員長、今川正美・衆議院議員、川越孝洋・民主党長崎県連合幹事長、中崎幸夫・長崎県平和労働センター議長(代理)、中尾貫・部落解放同盟長崎県連合会委員長、荒木保博・長崎駅前商店街協同組合理事長など各界の来賓があいさつした。
 なお、土井たか子・社民党党首、横路孝弘・民主党副代表、矢田部理・新社会党委員長、島袋宗康・沖縄社大党委員長、日教組、全港湾、海員組合、全国農政協、部落解放同盟や各級議員、自治体首長、中国駐長崎総領事、ヘリ基地反対協議会(沖縄)など七十二の団体・個人から祝電・メッセージが寄せられた。
 代表世話人あいさつを行った槙枝元文氏は、「自主・平和・民主の国をつくるため、活発な議論をお願いしたい」などと呼びかけた。
 総会に先立ち、吉元政矩・元沖縄県副知事が「東アジアにおける冷戦崩壊と沖縄の米軍基地」と題して記念講演を行った。
 吉元氏は、まずアーミテージ・元国防次官補ら超党派のグループがまとめた対日政策提言への批判から講演を始めた。
 「提言は、米軍基地への日韓両国の民族的反発が広がるだろうと予測し、日米関係を『成熟したパートナーシップに向けて前進させる』とある。これは、これまでの『防衛の分担』ではなく、日本に具体的に米国が行う戦争に参加させようというものだ。米英関係のように、『負担の分かち合い』から『力の分かち合い』へということだ。しかも、憲法の改正要求までにおわせている。これは、相当に注意を払わざるを得ない」と暴露した。
 「この間、わが国は九六年に日米共同宣言を行い、周辺事態法や憲法調査会など、さまざまなことを行ってきた。来年には、教育基本法の見直しや有事法制、さらに憲法改悪が日程にのぼってくる。まさに米軍に協力しての『右向け右』だったが、これからは、『前へ進め』となるのではないか」
 吉元氏は政府の対米追随を厳しく批判し、話題を国際情勢に転じた。
 「アジアでも、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に北朝鮮の参加が実現しており、大きな意味がある。二十一世紀は、もはや違った時代になる。それでも米国と共に戦争をし、憲法改正まで行おうというわが国の実態がある」
 「米国の本当の狙いは朝鮮ではなく、中国だ。東アジアの緊張の焦点は、すでに台湾海峡に移っている。それを基本にしながら、東南アジア、南アジア、中東へにらみをきかせる。たとえ韓国の基地が撤去されても、在日米軍基地はそうはいかない。在日米軍の撤退問題は、中国やASEANの経済発展の中、わが国がどう役割を果たすかを抜きに論ずることはできない」
 「アジアでは、平和な地域をつくる努力がされている。わが国はこうした動きこそ重視すべきだ」
 吉元氏は最後に、「アジアとの共生のためにも、北朝鮮との国交を急がなければならない。まず謝罪し、信頼関係をつくることが重要ではないだろうか」と講演を結んだ。
 記念講演後、特別報告として、被爆者の葉山利行氏(長与町議会議員)、高校生平和大使の石司真由美さんが平和運動にかかわる立場から発言を行った。
 続いて、加藤毅・国民連合事務局長が、総会議案の提案を行った。
 加藤氏は、「本総会の意義は、何よりも日米安保体制から離脱し、全土の米軍基地を撤去して、自主外交を行うことを明確にすることだ。こうしてこそ、自主性を強めるアジア諸国と共生でき、二十一世紀の日本に明るい展望を開くことができる」
 「こうした目的のため、さらに広範な国民各層の力を結集するものへと、国民連合も挑戦することが必要だ。長崎は被爆地ゆえに、アジアと世界の平和を強く希求してきた。ここから、『安保はいらない、自主外交を』の声を広げよう」と述べた。
 討論では、全国から参加した四十二人が発言した。
 「日米関係やわが国の進路がますます問われている」「アジア情勢は大きく変化し、各国は自主性を強めている。わが国がアジアと共生する必要性が高まっている」「労働運動は国民運動の先頭で闘うべきだ」「国民連合はこの一年間の活動を通じ、大きく前進できる確信をつかんだのではないか」など、活発な発言・討論が行われた。
 とくに、米国がわが国に「英国並み」の役割を求め始めていることに関連して、日米関係の見直し、安保破棄の闘いを重視すべきだとの意見が多く出された。また、学生や青年労働者の活発な発言が目立った。
 活発な討論後、槙枝代表世話人が安保破棄、憲法改悪反対、日朝国交実現、歴史わい曲への反撃の四点を中心に、討論のまとめを行った(要旨・別掲)。
 最後に、「日米安保を終了させ、沖縄から全土から米軍基地を撤去し、自主平和外交でアジア共生の道を進もう!」とするアピールを採択した。


槙枝元文・代表世話人のまとめ
安保、改憲、日朝などについて

 日米関係については、多くの意見が出た。
 二十一世紀の早い時期に、米国の「一極支配」がくずれることは間違いない。実際、日本が援助しなかったら、米国は世界戦略を維持できない。経済も、ユーロの登場でドルが相対化している。アジア諸国もアジア通貨危機を教訓に、米国離れを進めている。わが国も、日米の軍事同盟から離脱するということが重要だろう。
 憲法調査会は五年間、憲法について議論するとしている。しかし、参院では、来年の選挙前に中間報告をまとめようという動きがあるそうだ。確かに、いまの憲法は万全ではない。だが、部分的な「改良」にだまされてはいけない。とくに、九条改悪に反対する運動の大同団結が必要ではないか。
 北朝鮮との国交実現については、日本は基本的態度が間違っている。たとえば、韓国併合は軍事力を背景にしたもので国際的に無効であるのに、日本政府は「有効」で「責任はない」としている。補償にも応じようとしていない。これは、国際的には通じない理屈だ。
 「拉致(らち)」が「疑惑」なら、でっち上げという疑惑もあるではないか。ミサイル問題も、なぜ米国のミサイルについては何もいわないのか。
 教育問題では、とくに歴史教育については危ぐしている。「侵略ではない。進出だ」というよう論調も活発だし、戦争についての教科書記述もきわめて簡略化されてしまっている。これでは、加害者意識は育たず、アジア諸国との共生などできない。
 国民連合の宣伝・出版活動だが、もっとわかりやすいのになるよう努力していきたい。
 新しい自主的平和的民主的な日本をつくるため、運動を強めよう。


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