20000805

東京 シンポ「お粗末!! 介護保険」

噴き出す問題点を討論


 シンポジウム「お粗末!! 介護保険−介護保険緊急レポート」が七月二十三日、東京で行われた。主催は、介護保障を考える市民の会。
 シンポジウムでは、四月から開始された介護保険制度による現場の混乱、利用者の不安や福祉の低下のようすが生々しく報告された。
 最初に発言した千葉県呆(ぼ)け老人をかかえる家族の会・安田陸男世話人は、調査結果をもとに、介護保険になってサービスを受けるための自己負担が大幅に増大していること、そのためにサービス利用を抑制せざるをえないと訴えた。
 続いて、二人のケアマネージャーが具体的なケースを例に、「在宅重視」といって発足したのに、給付額が低いため受給者は在宅では生活できず、在宅介護が危機にあるとの報告を行った。
 武蔵野市の介護保険課サービス相談調整専門員・横橋利夫氏は、行政の立場から、保険料のことなどで市民から苦情が寄せられている実態などを紹介した。
 伊藤周平・九州大学助教授は、本来協力し合う立場である福祉の利用者と事業者が、制度が変わったことによって、お互いに不満をぶつけあう構図になっていると指摘。
 また、九州などでの事例を紹介しながら、さまざまな問題点を総括的に提起した。
 利用者負担の増大による利用の辞退、抑制。結果、かえって要介護度が重くなり、多くの費用を必要としていること。在宅介護を担うと期待された企業の撤退や、ヘルパーの質の低下などである。
 最も問題なのは、福祉の商品化により福祉労働が根本的に変質し、福祉に熱意をもつ人材の確保を困難にしてしまったこと。問題点を是正するには、元の制度に戻すしかないが、こうしたことが総選挙で争点化しない政党のあり方もおかしいと指摘した。
 会場からも、ヘルパーの劣悪な労働条件に、せめて社会保険だけでも加入させてほしいとの声や、福祉施設の職員からは、通所施設がせいぜい七割程度の稼働でとても存続できないという訴えがあり、発言者との活発な応答が行われた。


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