20000425

横浜 生活環境を守る条例を

大型店の横暴な進出に反対

「ドンキホーテ出店反対の会」渡邉 秀明会長に聞く


 来る六月、大規模小売店舗法(大店法)が廃止され、大規模小売店舗立地法(大店立地法)が施行される。同法の目的には「中小小売業の保護」は含まれず、規制項目も駐車場など環境問題に限られる。これにより、大型店の出店はいっそう野放しとなり、中小零細小売業の営業は脅かされる。現在、大型店進出を規制し、地域経済・環境、地元商店の利益を守る闘いが、全国的に広がっている。二十四時間営業のディスカウント店「ドン・キホーテ」の首都圏での急拡大は、各地で紛争を引き起こしている。出店に反対している横浜市新山下の「ドンキホーテ出店反対の会」(渡邉秀明会長)に、運動の経過などを聞いた。


 私たち住民がドン・キホーテの出店計画を知ったのは、九九年三月の雑誌記事だった。さっそく自治会長が同社に電話をしたが、「計画は白紙の状態。はっきりした時点で説明にうかがう」とのことだった。実際は、すでに二月末に大店法上の出店申請が行われていた。結局、住民には何も知らされずに経過した。
 五月末に突然、住民に個別訪問があった。出店予定地はホテル跡地で、その解体をするということだった。
 その時は、住民が納得したら解体工事を始めるということだったが、実際は翌日から工事が始まった。住民が抗議すると、「カネが欲しいのか」という横柄な態度だった。後でわかったが、訪問にきた人物は前科五犯のサギ師だった。
 その後、ドン・キホーテから地元説明会をしたいという話があった。しかし、六月三日の説明会に来たドン・キホーテ社員ははたった一人。この地域には、「コンテナ街道」といわれる国道三五七号線が通っており、住民は、深夜営業で住環境がどうなるのかが関心事だった。しかし、それには「担当でないから」などと答えない。
 私たちは、強行されている解体工事を一時止めることを求めた。しかし、彼らは最初から答える気はなく、わずか三十分で流会してしまった。
 ドン・キホーテはその後、「強硬な人(近隣住民)をはずしてくれたら、説明する」と言ってきた。自治会としては、もっとも影響を受ける人びとを除いて説明を受ける理由はない。こうして、八日に「反対の会」を結成した。

無策な行政を動かす

 反対の会の中には、大きく二つの意見があった。
 一つは、ドン・キホーテの進出で中小商店がたちゆかなくなるという、絶対反対の立場。もう一つは、出店自身ではなく、まきちらす公害を拒否するという意見だ。いずれにせよ、大型店出店により、住民がガマンを強いられることは受け入れられない、ということで一致した。
 スローガンは二つ採択した。一つは、誠意のない企業はこの町にはいらない。だから出店反対。もう一つは、行政に対し、起こる被害に対して保護条例をつくってほしいと。そして、九〜十月には約八千人の請願署名を集めた。道路が混雑すれば港の機能にも影響するということで、港湾の労働組合にも署名してもらった。
 その後、東京の保谷市や三鷹市など、ドン・キホーテが進出している各地の情報を集めた。
 保谷では、ドン・キホーテは閉店時間を勝手に夜中の三時に延ばした。横浜市港北区では、付近のマンション住民は、騒音を避けて廊下に寝ている人までいる。普通、スーパーなどが近くにあると地価が上がるが、ドン・キホーテは逆。新山下でも、不動産屋がアパートの家賃を下げたほどだ。
 住環境など、いろいろな問題は、大店法の規制の外で起こっていた。だから、私たちの闘いは行政が相手だった。
 十二月、私たちは横浜市議会に請願したが、ある市議は「闘いようがない」と言う。問題に対して条例をつくるのが議員の仕事ではないか、という思いだった。
 運動の結果、議長提案でこの問題が取り上げられ、市議会は意見書を出した。神奈川県議会も、二十四時間営業の店舗について条例をつくるという意見書を採択した。新しく条例をつくるのは難しいが、いまある条例を改正して規制することは可能だ。
 ドン・キホーテは、住民に「開店が遅れた損害を補償しろ」とまで言ってきたし、マスコミには「住民が話し合いに応じない」などといっていた。当初の開店予定だった三月一日直前にはナマ物を運び込み、住民には実力行動をしようという声もあった。
 三月末になって、初めて協議の場をもった。開店時間は、県への申請上は十時〜八時だが、それを通常は夜中の三時まで延ばしたいといっている。この問題が、いま交渉の焦点になっている。

大型店規制し中小商店守れ

 商店街からすれば、ドン・キホーテの出店は死活問題だ。出店表明だけで閉めた店もある。この地域でも、住民の三〇%近くが六十歳以上の高齢者であり、ますます商店街が必要なはずだ。
 大事なのは、大型店を規制し、住環境を守る条例を制定することである。大店立地法が施行されると、一千平方メートル以下の大型店はやりたい放題になる。一千平方メートル以上の店舗には環境規制をするが、それ以下は、国も自治体も何もしないというのはおかしい。
 とにかく、日本には都市計画がない。大店法も過去四回にわたって骨抜きになってきた。条例をつくれという運動は、問題が解決しない限り引っ込めない。いまは経済最優先になっていて、黙っていると、住民の生活はどんどん追いやられてしまうからだ。


【経過】
1999年2月 ドン・キホーテ、神奈川県に新山下への出店申請。
 5月 近隣住民を訪問、翌日、解体工事を強行。
 6月 「ドンキホーテ出店反対の会」結成。
 9月 反対の会、署名運動を開始。1カ月で約8000人分集まる。
2000年3月 ドン・キホーテ新山下店ビル落成。28日、反対の会と初の話し合い開かれる。
 4月 横浜市、駐車場の台数基準を独自に設定する運用基準を策定。神奈川県、ドン・キホーテに出店許可。


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