20000325

米軍への思いやり予算 ただちに撤廃すべき

この売国的負担ですでに3兆円
小渕政権の対米屈服は許されない


 日米間で在日米軍の駐留経費の削減をめぐって対立が続いている中、コーエン米国防長官は来日し三月十六日、河野外相、瓦防衛庁長官らと会談した。会談で河野外相は思いやり予算の特別協定の来年三月末期限切れに関して、削減を視野に入れ「米軍の合理化・節約努力」を求めた。だが長官は「現在のレベルが維持されることを希望する」と、わが国の負担による米軍基地維持強化を求め、河野外相の要求を一蹴した。だが、「思いやり予算」そのものが日米地位協定にもないきわめて売国的なものであり、廃止されるべきものである。政府の妥協的態度は許されない。沖縄県民の闘いと結びついて「思いやり予算」の撤廃を求める世論をつくり出そう。


 「思いやり予算」とは、一九七八年に当時の金丸防衛庁長官が、米軍が負担すべき基地労働者の労務費六十二億円を「思いやり」という名目で負担したことに始まる。これは毎年拡大し、現在は約二千七百億円に達している。つまり、二十年余りの間に、約三兆円以上というぼう大な負担が行われた。
 政府は、法的根拠がない思いやり予算では処理できなくなり、八七年度からは「特別協定」を結んで処理しているので、「特別協定予算」となった。この内訳は家族住宅の建設費用、基地労働者の労務費、水光熱費、訓練移設費となっている。まさに米軍にとって至れり尽くせりである。
 わが国は米軍駐留費用の七六%である四千六百二十億円(九七年度)を負担しており、うち「思いやり予算」は二千七百三十八億円となる。つまり、日米地位協定に基づき米軍が負担すべき基地の維持運営費用の一部を「思いやり予算」で負担している。これは、米軍の駐留している国々と比較しても異様に高い負担である。
 わが国に駐留する米軍は約四万七千人だが、六万人の米軍が駐留するドイツでは、負担額は千五百二十億円で負担率は二六%に過ぎない。まさに米国からすれば「米軍駐留国の中で最も気前がよいのが日本だ」(アーミーテージ国防次官補、八八年)というわけだ。
 米国は、九三年版米国防省報告で「日本は、米軍の給与と日本に転嫁できないものを除き在日米軍の駐留経費を実質的にすべて負担するであろう」と報告しているように、米戦略は明確にわが国のぼう大な経費を含む軍事負担を組み込んでいる。最近では「戦略的分担」などと、わが国の負担が当然であると公言している。
 この問題が最近、クローズアップされてきたのは、特別協定が来年三月で切れるため、それを継続するには本年八月までに概算要求をまとめなければならず、時間的余裕が少ないからである。
 安保再定義、新ガイドラインは、米国が在日米軍基地の役割を極東だけではなく、中東を含む世界戦略の中に位置づけていることを明確にした。
 わが国政府は、米国に追随し米戦略に組み込まれ、いっそうアジアと敵対する道に踏み込んだ。このことは、わが国とアジアの平和と繁栄にとって、障害にしかならないことは火を見るよりも明らかである。
 そもそも諸悪の根元である安保条約の上に、国民の税金を不当な「思いやり予算」までつぎ込むことは断じて許されない。
 思いやり予算の削減ではなく、撤廃を求めなければならない。ましてや小渕政権の対米屈服は許されない。
 米軍基地の強化拡大に反対し闘う沖縄県民の運動との連携を強め、「思いやり予算」撤廃の要求の声を大きくしよう。そして米軍基地撤去、安保条約破棄の国民運動をつくり出していこう。


日本は安保植民地か
東京国際大学 前田 哲男教授

 日米地位協定第二四条では、経費の分担についての原則が示されおり、施設及び区域の提供については、日本側の義務で無償で行うことになっている。しかし、維持運用にかかる経費については、米軍側が負担することになっている。
 だが、「思いやり予算」によって毎年二千六百億円以上の負担をしながら、米国は「戦略的分担」という新たな位置づけをし、無条件で更新するように求めている。こうなると、国家間の協定が守られなくなる。もちろん、安保条約の是非についての意見はさまざまあるが、安保条約でその運用を定めた地位協定が守られないとすれば、一体なんなのかとなる。
 本来は米側が維持運用にかかる費用を分担することから、従業員の人事権、施設の管理権を主張してきた。にもかかわらず、日本側が経費を負担しながら、人事権、管理権もないという不平等だ。もし、日本が「戦略的分担」を行うなら、人事権、管理権をもたなければ、在日米軍基地は軍事租界になってしまう。まさに安保植民地である。
 また、地位協定には、低空飛行訓練、米軍犯罪者の引き渡しなどについても、差別的な条項が残されている。
 今、岩国基地は拡張工事を行っている。千六百億円の経費すべてが「思いやり予算」であり、基地拡張で滑走路が二本になる。
 しかし、もともとは現在の滑走路を返還し、沖合いに新しい滑走路をつくる約束だった。ところが、米軍はそれをほごにし、旧滑走路を返還しないと言い出した。
 違約が公然と行われたが、これをみれば米軍の実態が推察できる。だから、普天間基地の移設問題では岩国の現実を注視し、もっと徹底して議論すべきだ。


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