20000305

政府による外形標準課税の導入反対

中小企業を殺す気か


 石原東京都知事は、大銀行の法人事業税について外形標準課税を導入すると議会に提案し、都議会各派もほぼ同意している。政府、自民党などは、この東京の動きを口実に全国一律の外形標準課税導入を狙っている。日本商工会議所など中小企業四団体は二月十六日、外形標準課税導入反対を政府に緊急に申し入れた。そのほとんどが経営の苦境にある中小商工業に、広く一律に課税することは、まさに中小企業つぶしとなる。このような増税導入は断じて許してはならず、広範な運動で阻止しければならない。全国商店街振興組合連合会の小林昌富・専務理事に聞いた。


4団体が全体反対を申し入れ
全国商店街振興組合連合会 小林昌富・専務理事


 大店法が廃止され、六月一日から大店立地法が実施されるが、やはり一番大きな打撃を受けているのは、小売業者であり商店街である。規制緩和によって大型店がかなり進出して、店舗数もかなり落ち込んでいる。地方の商店街では空店舗が非常に多い。商店街では平均で一〇%の空店舗があり、商店街全体の四割以上に空店舗がある状況だ。
 これではいけないと、中心市街地活性化法など「町づくり三法」を使いながら活性化しようと努力してきた。また、税制面でいえば、中心市街地では固定資産税がかなり高い。また、事業継承するには相続税の問題もある。これらについて見直しを要求し、一定程度われわれの要求が実現した。商店街としては、これから自助努力を強めながら、何とかやっていこういとしていた。
 ところが、東京都が勝手に外形標準課税を出してきた。そして、外形標準課税の一律導入の動きが始まった。つまり、われわれは精いっぱい努力しながら、これから何とかやれそうかなと思っていた矢先、頭から冷や水を浴びせられた、と感じている。
 われわれ全国商店街振興組合連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会は、外形標準課税については絶対反対と強く申し入れた。われわれは、法人税、固定資産税を払っている。その上赤字企業にまで課税するというのは、とうてい容認できない。赤字法人の九九%は中小企業だ。
 また、中小企業の廃業率が高く、国はベンチャーによる起業をいっている。だが、外形標準課税が入れば、ベンチャーは資本蓄積もできていない段階なら、とても税金を払えないし、結局は起業もできなくなる。
 また、課税方法についてだが、規模、従業員数、固定資産などでかける議論がされている。中小企業はどちらかといえば、大企業と違って労働集約的な事業者が多い。従業員数にかけられれば、中小企業はもたない。
 また、国際的な流れでも、ドイツ、フランスなどでは廃止の方向で進んでいる。その流れにも逆行するものだ。
 地方財政については、厳しいなら財政見直しなど新たな方法を考えるべきだ。特定の企業の税金でまかなうのは納得できない。税のあり方全体を抜本的に見直し、税の不公正を正すべきで、それで補うべきだ。  
 また、仮に大銀行だけに課税するとしても、貸し渋り、強制回収や利益の少ない支店の廃止など、銀行によるわれわれ中小業者への犠牲の押しつけも懸念される。
 今後だが、まず二月十六日の「法人事業税への外形標準課税導入に改めて反対する」という四団体の声明を、各県段階から市町村にまで配布し、全体の意思一致を固めたい。
 また、中小企業団体の各種大会があれば、引き続き外形標準課税そのものに反対という意思を表し、訴えていきたい。たとえ、実施が十五年後あろうとも、反対し続ける。


党東京都委員会
大銀行への外形標準課税について声明

 日本労働党東京都委員会(秋山秀男委員長)は三月三日、石原都知事が提案している大手銀行への外形標準課税導入に関する声明を発表し、都議会に陳情を行った。声明の要旨を紹介する。


東京都の大手銀行への外形標準課税導入に関するわが党の見解について(要旨)

一、石原都知事は、二月十六日、大手銀行に法人事業税をかける際に外形標準課税を新年度から導入する条例案を、都議会に提案しました。
 石原都政は「改革」の名の下に弱いものいじめを行っており、打倒すべきであると考えています。しかし、大手銀行に限って導入するという知事の提案は、その限りで支持できます。
 われわれは、石原都知事が政府、財界などの干渉と闘い、大銀行への課税導入を貫くことを要請します。
一、われわれは、もとより、全業種への外形標準課税には反対であり、断固その導入を阻止すべきであると考えます。
 現在、全国で法人企業は約二百五十万、うち赤字法人は約百六十万ありますが、その九九%は中小法人です。従って、近い将来、政府及び自民税調が狙っているように、全業種に一律に外形標準課税が導入されるとしたら、もうかっている大企業には(現制度に比べて)減税となり、大多数の中小企業には増税となることは明らかです。
 その結果、中小企業の経営は深刻な打撃をこうむり、地域経済の衰退に拍車がかかることになります。東京経済の発展も大きな制約を受けることになります。
一、外形標準課税導入を、地方税収の安定の見地から歓迎する声が一部に存在します。
 しかし、もうかっている黒字法人は大都市圏に多く、赤字法人は地方に多いのが現状です。もし、全業種にこの税制を導入したら、大規模な黒字法人ほど大幅な減税となり、従って大都市圏の地方自治体では減収になり、自治体財政の危機はさらに深刻化します。逆に地方では、中小企業の経営は増税の結果深刻化し、倒産・廃業など地域経済の衰退が急速に進むことになるのです。
一、また、地方自治体の課税自主権の見地から、外形標準課税導入に賛成する勢力が存在します。われわれも一般的には、財政権限を地方自治体が中央政府から奪い返すことに賛成です。
 しかし、中小企業また地域に働く人びとを増税で苦しめ、大企業を減税で優遇し、何のための課税自主権であるのか、これこそが重要です。
一、今日、外形標準課税が浮上してきた背景は、中央及び地方が抱える財政危機が深刻なものとなり、解決を迫られているということです。
 しかし、誰が財政を危機に追い込んだのかが、問われねばなりません。
 七兆円を超える累積債務を抱える都財政、確かに「危機」ですが、その原因は、予算の使われ方にあったのです。鈴木元知事は、世界都市・東京をめざして、バブルが崩壊した後も膨大な借金をして臨海副都心開発など大規模な公共事業に都財政をそそぎ込みました。
 政府及び自民税調は石原都知事の提案をチャンスとして全業種への外形標準課税の導入に本格的に乗り出しています。労働者、労働組合は、敵の策動を見抜き、広範な中小商工業者と力を合わせてこれを阻止しよう。
一、大手銀行への外形標準課税は本年四月から導入されます。しかし、都財政が、東京に住み、あるいは働き、生活する広範な都民の経営・暮らしの確保と向上のために適切に使われているか否かこそ大事な問題です。
 二〇〇〇年度予算案も、老人福祉や教育費の切り捨て、また中小企業対策費の一割以上のカットや市町村への補助金削減など、弱いものに財政負担を押しつけながら、他方、臨海副都心開発など大企業のための巨大開発に一兆円を超える膨大な財政を発動することを提案しています。これでは何のための「大銀行への新たな課税」なのか不明朗となり、また東京都民にとって無意味なものとなります。
 従って、大多数の都民の暮らしのための予算に組み替える闘争こそが求められています。


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