20000225

外形標準課税 小渕政権、「石原案」突破口に導入狙う

中小への課税拡大を許すな


 石原都知事は二月七日、大手銀行に対して外形標準課税を導入することを発表した。小渕政権は「金融システム安定化に逆行する」などの「懸念」を表明しつつも、政府・自民税調の動きにみられるように、むしろこれを突破口に中小企業も含めた全企業への課税拡大を狙っている。本年度政府予算案を含め七十兆円もの血税を投入されている銀行や大企業への課税拡大は当然だが、ほとんどが経営困難にある中小零細企業への課税拡大は、断じて許されない。しかも石原都政は、こうした増収で臨海部開発や外環道建設など、引き続き大企業のために財政支出をしようとしている。中小商工業者と連携して「全業種への導入」=増税に反対する世論と行動を盛り上げなければならない。


 東京都による外形標準課税導入の条例案の骨子は、(1)課税標準は銀行の各事業年度の業務粗利益とする(2)都内に拠点を置き、事業年度終了日の資金総額が五兆円以上の約三十行に課税する(3)税率は日銀などの特別法人二%、都銀・信託銀行・大手地銀などの法人は三%(4)五年の時限措置とする、などである。
 外形標準課税は、都道府県税である法人事業税の課税対象を、資本金や給与総額などいわゆる「外形」を課税標準とし、現在の所得以外にも広げるものである。これは、企業が黒字か赤字かにかかわらず課税されるものであり、企業にとって消費税に匹敵するものといえる。
 確かに、今年度政府予算案を含めると七十兆円もの血税を投入され、数々の優遇税制で恩恵を受けている大銀行や大企業に課税するのは、当然である。
 マスコミは、政府が石原案に「懸念」を表明したことをもって、事態を「政府・銀行対石原都政」のように描き出している。このキャンペーンに惑わされてはならない。
 支配層は、政府税調が昨年末、外形標準課税導入を答申したように、石原案を突破口に、中小企業を含む全企業に課税することをもくろんでいる。支配層が狙っている「本丸」はまさにそこにある。
 これが中小企業に実施されれば、赤字法人の九九%を占める中小企業にとっては死活問題である。また、「景気回復」などとはますます縁遠い事態が生じることは明白である。
 しかも石原都政は、この課税による税収を臨海部開発や外環道路建設、ベンチャービジネス育成など、ひとにぎりの大企業のための施策に使おうとしている。新税導入の根拠である「財政危機」をまねいた都の責任も、あいまいなままである。
 中小企業への課税拡大につながる外形標準課税導入は、断じて許されない。
 ところが、この問題でまたしても支配層のお先棒をかついでいるのが、共産党である。
 共産党は、石原知事にすり寄り、石原案を「都議団が以前から主張していたこと」と、「いち早く賛意を表明」するなど、課税推進にやっきとなっている。まして、中小へ拡大される警戒はまったくなく、このような態度では、中小零細企業の利益を守ることはできない。
 中小業者は別掲のように、猛反対の声を上げている。中小商工業者と共に、外形標準課税の全業種への導入に反対する世論を盛り上げよう。


中小への拡大は倒産を増やす
湖東 京至・静岡大学教授


 今回の石原都知事による外形標準課税導入は、対象を資産五兆円以上の銀行にしぼったものだ。しかし、銀行だけでなく、各業種の一定規模以上のところ、たとえば自動車産業であれば売上げ一兆円以上などのように、一定水準以上のところにしぼって課税対象にするのが正しいのではないか。
 それを広く日本の中小企業にも適用するということになると、大変な問題が起こる。中小企業は負担能力がないばかりか、現状でもかなり厳しい状況にある。とくに、消費税の転嫁がしにくいという現状がある。その上、赤字でも課税される外形標準課税が加わると、倒産の危機にひんするだろう。これは日本の経済にとってもきわめてよくない。
 法的にも、負担能力のないところに税金をかけるというのは、違憲ということになる。
 政府税調や与党、自治省も、中小企業にまで外形標準課税を広げようとしている。これは危険なことだ。そういう意味では、この東京都の問題がそのきっかけに利用されないか、危ぐする。


資料
法人事業税への外形標準課税導入に改めて反対する (要旨)


 法人事業税への外形標準課税の導入については、昨年末の政府税制調査会答申において関係者の活発な議論が求められている。これを踏まえ、かねてからその導入に反対を主張していた中小企業関係団体としては、現時点で改めて、外形標準課税の導入には絶対に反対である旨を表明する。

(一) 制度上の問題点
 賃金、固定資産等を課税標準に採用する外形標準課税は、雇用や投資活動に抑制的に作用する。
 輸入品との価格競争において劣位に置かれてしまうとともに、生産拠点の海外移転などわが国産業の空洞化を一層促進させる。
 外形標準課税は、ドイツやフランスでは雇用や投資活動に抑制的に作用することなどから廃止や見直しの方向にあるとともに、典型例として引用される米国ミシガン州においてさえ、昨年、州知事は廃止法案に署名した。これら諸外国の動向からも、国際的な潮流に反する。
 業種、企業規模や地域間で税負担の大幅な変動が生じる恐れが極めて大きい。
(二) 赤字法人や中小企業にとっての問題点
 約百六十万の赤字法人(うち九九%は中小法人)は、すでに地方税として法人住民税や固定資産税等を負担している。外形標準課税は、これら赤字法人に対し新たな負担を生じさせるとともに、収益性の低い多くの中小黒字法人においても増税となる恐れが強い。
(三)給与総額
 人件費抑制に働くことから雇用縮小につながる恐れが強い。また、労働集約的である中小企業の税負担が大きくなる。

二〇〇〇年二月十六日
日本商工会議所/全国商工会連合会/全国中小企業団体中央会/全国商店街振興組合連合会


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