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喜劇―なんくる狂想曲―
沖縄のこころを乗せて走るバス!
民衆の立場でユーモラスに

めんそーれ沖縄

吉村 太一


 十一月に行われた「めんそーれ沖縄」東京公演を見た。これは、沖縄のもつ一種独特の雰囲気やテンポを感じさせる舞台劇である。
 あらすじは、現在に生きる沖縄の若者が、バスに乗車してこれまで沖縄で起こったさまざまなことについて追体験するというものだが、その基調は全体としてにぎやかにまとまっている。例えばあの「コザ暴動」を再現した場面などは、そのテーマの重さにもかかわらず、非常にわかりやすく、また民衆の立場から描かれている。
 また、一人のおばぁーが米軍の軍事法廷にかけられる場面などは、そのおばぁーが毅然と、しかもユーモラスに米側とわたりあうようすが演じられて、とてもおもしろい。
 舞台の中で「世界が走っている、ヤマトが走っている。沖縄が走っている。でも、その先に何があるんだろうか」というセリフがある。これまでいわゆるヤマト(=本土)、そして米国の政治にほんろうされ、今なお普天間基地移設問題や二〇〇〇年沖縄サミットなどによって「走らされてきた」沖縄の思いが、伝わってくるようである。
 脚本を手がけた嶋津与志(しま つよし)氏は、「現在のオキナワに現在のヤマトをぶつけたら未来にどんな答えが出てくるだろうか。われわれウチナー・グループとヤマト・グループの混成団は一台の架空のバスをしたてて《基地の島》を横断してみることにした。バスの中ではいろんなことが起こった。音楽と歌と踊りと奇妙なセリフの絡み合いがあって、人びとはだんだん喜劇的に自分自身の素地をあらわしてくる。腹をかかえて笑いころげていると、ふと笑いの対象は自分自身ではないのかと立ち止まってしまう。現代を漂流する奇怪なバスの中では何が起こるか、保証の限りでない。なぜなら、観客自身がこの奇妙なドラマの片棒をかついでいるのだから」と語っている。
 おばぁー役は、現在上映中の「ナビィの恋」という映画にも出演している平良とみが演じている。舞台の中で彼女が発するエネルギーは見ている者を圧倒し、また和やかにしている。
 沖縄のもつ歴史と現状は多くの人びとの関心を呼び起こし、沖縄をテーマにした演劇や映画、小説などが最近注目を集めている感じがしている。
 政治や経済のみならず、こうした文化的な面でも、沖縄から目をはなせない。 


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