991205


日産の大リストラ
丸ごと切られる部品会社も
組合から情報もなく不安

下請けはどうなるんだ

日産下請け工場労働者 松岡 武文


 日産自動車の大リストラ計画が発表されて、はや一カ月半。村山工場をはじめ五つの工場閉鎖、グループ全体で二万人以上の人員削減、販売会社の統合、部品業者の半減、コスト削減など、どれをとってもばく大な影響が出るといわれている。
 私の職場は、一次下請けの部品メーカーで、約五百人働いている。数十種類の部品をつくっている。職場では役員室にゴーンの写真を飾っているようだが、今度のリストラ計画が出て、まだ会社からの具体的な話はない。組合でも、新聞でいわれていること以上にこの問題での話はなく、現場のところでは情報も新聞やテレビで知るぐらいだ。だから、皆ばく然とした不安につつまれながらも、自分のところだけは残ってほしいという気持ちで働いている。部品関係では、業者を減らすことや、ここの工場は残って生産が集約されることから、むしろ会社としては仕事が増えるのではないかと期待しているようだ。
 しかし、過酷なコスト削減が要求されてくるのは必至で、今度ばかりは、相当に厳しい状況になるのではないかと思う。特に、二次、三次といった下請けのところでは、やっていけない会社がかなり出てくるのではないかと思う。フランス人がやろうが、日本人がやろうが、二次、三次の下請けのところは、今でもとても無慈悲で、めちゃくちゃなやり方でいじめているのだ。特にトヨタがひどいようだが……。
 いま、職場では、会社側が作業服の補助や従業員食堂の補助などの切りつめを提案してきている。労働者の負担分は次第に増えている。こんなことを手始めに、これから労働条件の切り下げ、賃金やボーナスなどの切り下げがいろいろと出てくるだろう。具体的なコスト削減などになれば、もっと厳しくなるだろう。
 組合は日産労連の傘下で、「部労」という部品関係で下請けのグループになっているが、親会社の意向にはさからえない。

文句一つ言わず働いて来たが…

 この地域には、部品関係の下請け企業が十数社ある。そのほか輸送関係、日産工場のメンテナンス関係などいくつもの下請けや系列の会社が工場を取りまいている。工場本体はそこそこに残っていくといわれているが、系列、下請け関係は、どこでもかなり影響が出るといわれている。二次、三次の下請けは県内、県外一円に広がっており、全体はよくわからないが、町によっては、税収などにもいろいろ影響が出るのではないか。また、部品によっては、丸ごと切り捨てられるところも出てくるだろう。以前は、会社がつぶれたり、合理化があったりしても、他にも仕事はあったが、これからはそうはいかない。まわりにも結構リストラで仕事をやめた人も出てきた。有効求人倍率は〇・四以下という。
 この会社に入って二十年近くになるが、これまで文句一つ言わず働いてきた。日産の系列ということもあって、それなりに安心もして働いてきたが、座間工場の閉鎖あたりから、どうもおかしいなあと思うようになった。大企業だからといってうかうかしていられないと思う。
 マツダはフォードの傘下に入って、アメリカ人のもとで、相当に厳しい状況になっているようだが、日産もフランス人のもとで、情け容赦ない合理化が始まる。
 先日トヨタの販売会社でストライキがあったようだし、マツダも組合が「もの分かりの悪い組合」に、と方針転換したという。あのトヨタでストライキということでびっくりした。
 いまは、会社の危機ということで、皆首をすくめてガマンするかもしれないが、一回りもしないうちに、日産でも、もの分かりの悪い人がたくさん出てくるだろう。そうならなければ労働者の生活は守れないのだ。 


Copyright(C) The Workers' Press 1996-1999