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イチローの何でも調査団

第2話 続・みやこ金融物語

近江 一郎


 いやはや、「日栄」をこの欄(十月十五日号)で取り上げてから、その『活躍
?』は目覚ましいものがある。ここ数日TVはトップで報道し、特番まであり、一般紙にも一面に掲載され、松田一雄社長はテレビに生出演のモテぶりであり、名実ともにぶっちぎりの「全国区の顔」になってしまった。
 口さがないある広告代理店の知人は「これは宣伝費に換算すると五十〜百億円ぐらいの値打ちがありまっせ」と揶揄(やゆ)していた。前回私が取り上げ、「日栄」を全国一の商工ローン会社と『持ち上げ』たのが彼らの目に入り、勢いづけさせたのか、少々反省の念も今はある。
 新井容疑者の録音された「声」は、現実にこれまで日常茶飯事だったことだ。数年前知人が保証人をしていて、脅迫まがいの言葉を浴びたそうだ。これまで政府、当局も金融再編成の最中であり、末端の金融機関(?)などには目は行かず、現実にそこで行われている『融資、取り立て』の実態にはほおかむりであった。
 常に政府は大企業優先で、庶民の生活など眼中にないのだ。年利も四〇・〇〇四%まで認められ、実際は青天井であり、中小・零細企業の人びとは貸し渋りの一般金融機関からは見放され、ここに足を運ばざるをえない現実がある。これがバブル崩壊後の日本の実態だ。
 日栄の旧本店は、日銀本店を模した建物である。日栄は二年ほど前に、みやこ大路の一角に京都ではとても目立つ大きなビルを建て、現本社にした。
 世間は不況で停滞しているのをしり目に、周辺の土地を買いあさり、数カ所に新たな日栄ビルが乱立し、その周辺はあたかも日栄村の様相である。その建物を見上げれば、まさにバブル崩壊と日本の政治の貧困さのあだ花に見えてくる。そのビル群に今は、右翼、報道陣、警察となかなかにぎやかだ。
 しかし花のお江戸の「商工ファンド」(日栄に次ぎ第二位)も、日栄に負けてはいない。「十一億円」の国税申告漏れと報道された。はたまた地元新聞では、日栄が告訴を受けた紙面のわきに目をやると、サラ金の雄「アイフル」さんも「大阪高裁で逆転敗訴」と報じられている。判決文は「社会通念を逸脱した違法な取り立て」とアイフルの敗訴宣告を告げている。双方負けじと、あい譲らず紙面をにぎわしている。
 まあ、悲しいことだね。もう二十世紀もあと少しで終わろうとしているのに、世紀末のなせる技か。しかし、ヨーロッパの十九世紀末は、独自の絢爛(けんらん)たる文化的価値を創造した。やはりわが日本の政治の貧困さ、資本主義の世紀末が、この経済的ドタバタを生んだのであろう。バブルという夢に一億総酔したのだろう。
 この京都へ観光に来られる方がありましたら、新観光スポットになってしまった日栄本社ビル、アイフル本社ビルをご案内します。ぜひこの秋、京都へ『おこしやす』。
 


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