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言葉だけおどる新指導要領

学校にも競争原理導入

現場教員は不安でいっぱい

海野ひろし中学校教員 小松 孝生


 読者のみなさんは文部省が出している「学習指導要領」というのをご存知でしょうか。学習内容や授業時間数などの基準を示したもので、全国の小中学校ではこれに従って教育を行っています。また、教科書もこれに基づいて編集されますので、現場に与える影響は非常に大きいものです。戦後何回か改定されてきましたが、そのたびに強制色が強まり、「日の丸」「君が代」の押しつけや、多くの「落ちこぼし」を生む過密な学習内容などが問題にされてきました。
 昨年十二月にも、新しい学習指導要領が告示され、小中学校では二〇〇二年度から完全週五日制と同時に実施されます。現在でも、それに向けて少しずつ先取り実施する動きがあります。
 文部省の宣伝パンフレットには、「ゆとりの中で一人ひとりの子どもたちに[生きる力]を育成する…」、「わかる授業、楽しい学校の実現・自ら学び自ら考える力の育成・特色ある学校づくりの推進」などと、美しい言葉がおどっていますが、そんなことをまともに信じて期待している教員は、少なくとも私の周囲にはだれもいません。それどころか、今でさえ大変な状況なのに、こんな指導要領でいったいこれからどうなるのかと、戸惑いや不安、危機感をもっているのが実際です。
 現行の学習指導要領の下でも、学習についていけない、あるいは学習意欲をなくしている子どもたちが多くなっています。また、子どもたちや親たちの考え方、行動にも大きな変化があり、いわゆる「学級崩壊」に象徴されるような新しい「荒れ」が広がっています。
 そのうえに、授業時数の縮減・教育内容の削減・選択教科の拡大・「総合的な学習の時間」の新設などが盛り込まれた今度の新指導要領が実施されれば、学校現場はほんとうに大変な状況になると思われます。

「財政危機」で賃金カットに

 私たちの労働条件からみても、ますます厳しくなります。たとえば選択教科を一つ増やすだけでも、たんに授業が一時間増えるのとは違う、多大な労力が必要なのです。教員定数も増えず、施設も予算も乏しい中で、多くのまじめな教員はがんばっていますが、いつまでがまんできるでしょうか。おまけに私の働く県では、「財政危機」で年間ン十万円の賃金カットです。もうキレそうです。
 今、私の所属する労働組合では、新学習指導要領の徹底的な学習・批判を進めています。その中で、この新学習指導要領が、財界の要求にこたえ、教育に競争原理を持ち込み、戦後の教育を解体・再編する動きの一環であることがはっきりしてきました。学校にも、リストラの嵐が吹く、大変な時代になってきたという気がします。
 最近、教員の「性非行」などがよく新聞で報道されています。先生もストレスがたまっているんだ、と解釈する人もいます。もちろんそれもあるでしょうが、私は何となく意図的なものを感じてしまいます。かつて国鉄が分割民営化されるときも、マスコミの報道によって国鉄労働者を批判する空気がつくられていきました。今回は、教育をリストラするための準備だと思うのは考え過ぎでしょうか。 


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