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中古コンバインが3百万円!

百姓で生活するのも大変

減反で米の収入は2分の1

農民 山田 孝司


 皆さんこんにちは。私が百姓になって七年ぐらいになります。四十五歳なので、若手農業者として生活しています。生活していますといいましたが、それまでのわずかな蓄えを毎年食いつぶしています。
 ところで、皆さんが食べている米の値段は安くなっていますか。私は買って食べたことがないのでよく分かりませんが、生産者米価は五年前と比べて約四分の三くらいになっています。ということは、それまでと同じ規模で同じように米作りをしていると収入は四分の三になるわけです。
 減反政策というのを知っていますか。米を作るのに適した田んぼで、三分の一は米を作ってはいけないという国の政策です。分数のかけ算ができる人にはすぐ分かりますが、米の収入は二分の一になっています。
 当初の計算では五ヘクタールで米を作れば生活できるだけの所得が得られるはずでした。当初の予定は崩れてしまいました。今では十ヘクタールないと生活できないかなと思っています。
 今、主に農業をしている人たちの年齢は六十歳をはるかに超えています。農家のいわゆる跡取り息子は自分の生活を守るためにも、米作りをするはずがありません。このあたりの平均耕作面積は一ヘクタールくらいです。この面積では確実に赤字です。他からの収入をつぎ込んで田んぼを維持しているのです。
 よく田んぼのダム効果についての話を聞きます。日本のような山から海までの距離が短いところは洪水が起こりやすくなります。その洪水を防ぐのに、多くの水を蓄えることができる田んぼが役に立つということです。減反政策は、洪水が起こりやすい環境をつくっていることになります。

収入減のなか農機具は高いまま
 
 農家の負担はまだあります。公道の畦(あぜ)ですが、草刈りは横に農地がある人がやっています。つまり自分の土地でもないのに草刈り管理をしているわけです。草刈りをしないと害虫、病気の元になりますから、やらざるをえません。
 また、ため池の管理ですが、老朽化した池の修復費用に、なぜか地元負担というのがあります。現在のところ地区の費用返済計画は二十年先まで、毎年二百万円となっています。ため池を修理しないで洪水が起きると誰が責任をとるのでしょうか。
 最近コンバインを買いました。中古ですが三百万円です。新車で五百万円の型です。コンバインの中古は当たりはずれがあるので買うなというのが百姓の常識です。貧乏なのですが、作業上必要なので買わざるをえませんでした。
 トラクターも古くなってきているので新しいのが欲しいのですが、三百万円です。乾燥機が必要なのですが、数百万円。それらを収納するのに必要な作業小屋に数百万円。田植機は昨年買いましたが二百万円。トラックが必要になりますと二百万円。収入は少なくなっているのに、機械、設備費は高いままです。
 最近農業を始める人が増えているそうです。会社を途中で辞めた人もいますが、主には定年退職者もしくは定年前退職者です。「以前少し手伝ったことのある百姓でもやるか」という感じの人たちです。誰でも田舎に家がある人は百姓になれます。しかし、その百姓で生活するのは大変なことです。
 生活するのは大変ですが、自分で種をまき、育て、収穫するのは実に楽しいものです。食料の自給率はとんでもなく低く、農家はまともな収入を得られていません。どうにかしないといけませんね。 


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