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日産大リストラ

うわさ話でもちきり
ここも閉鎖されるかも

日産自動車労働者 鈴木 隆


 朝、村山工場や日産車体京都工場など五工場閉鎖、二万一千人削減などの合理化案が伝えられた。みんなここの工場は閉鎖にならないと聞いてほっとしている。だが、先行きを考えると、ここだっていつ閉鎖されるか分からず、不安でしょうがない。誰かが大きい声で「うちじゃなくてよかった」と言ったが、その声は不安を打ち消そうとしているのが見えみえだ。
 それにしてもどうなるのだろうか。昼休みは、食堂や休憩所で「下請け・関連をいれると十万人以上が減らされるらしい」「村山工場の下請けで閉鎖を決めたところがあるらしい」などのうわさ話が飛び交う。合理化案は示されたが、細かいところは決まっていないので、余計に不安になる。
 組合は、組合員の雇用の確保について不十分なので、臨時中央労使協議会の開催を申し入れた。これくらいのことは労働組合だからやって当然だ。いつも会社の言い分しか俺たちに伝えない組合だから、本当に俺たちを守るために闘うかは疑問だが……。
 村山工場には座間工場から移った人がずいぶんいる。これでまた、「栃木や追浜へ行け」と言われても大変だろうな。ここでもそうだが、家を買ったり、子供の学校などが決まった人は簡単には動けない。家を売ってといっても、この不況で簡単には売れないし、逆に足元を見られて買いたたかれるだけだろう。結局、単身赴任で家族崩壊だ。
 俺は息つく間もなくベルトコンベアで流れてくる車にネジを取り付けている。有給休暇もほとんどたれ流しで使えないでいる。ところが最近、台湾の地震で部品が入らずラインが止まって休みになった。地震でもないと休めない実態だ。こんな俺たち二万一千人が削減されるなんて、何か悪いことでもしたのか、と言いたい。
 職場は合理化、合理化で人数が減らされて、仕事がきつくなっているが、車種によって売れ行きが違うので、何かあると売れる車をつくっている工場に応援になる。
 最近、横須賀の追浜工場に応援に行った人が職場で話していた。
 「仕事がきついのはどこも同じだが、宿舎の元独身寮はベニア板で仕切られたタコ部屋だ。しかもふとんもシーツも汚い。しょうがないので自分でシーツを買ったよ。また、交替勤務で眠いときに暴走族がブンブンと走り回って眠れなかった」。
俺も最近、会社から肩たたきをされたが、冗談じゃない。この不況で辞めて働く場所などありゃしない。そりゃあ中には設計やコンピュータなどで優秀な人は見切りをつけて、辞める人もいるらしいが、大部分の人は辞められない。それこそ家のローンだって大変だ。
 ところが組合は「あれは肩たたきではなく、相談だからしょうがない」と会社の言い分を丸のみだ。
 グローバル化、大競争などの言葉が毎日、新聞に載っている。資本家は世界中でもうければよいかも知れないが、俺たち労働者は、そうはいかない。こんな世の中から、労働者が安心して暮らせる社会にならないと。そんなことを考えさせられている毎日だ。 


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