991025


東海村の臨界事故

なぜ障害者に情報伝えぬ?

長谷川 三郎


 皆さん、お元気でしょうか。さて、茨城県東海村の核燃料加工工場(JCO)の臨界事故については、テレビや新聞でよく知っていると思います。核物質の恐ろしさ、原子力行政のずさんさが改めて明らかになりました。
 この事故で防災無線を通じて、住民に避難通報が出されたことは、よく伝わっていると思います。しかし、こうした事故の陰で、多くの心身障害者には避難通告が伝わらなかったことを知っていますか?。
全日本聾唖(ろうあ)者連盟は、十月十五日の機関紙「日本聴力障害新聞」臨時増刊号で、緊急通報が聾唖者に直接、伝わらなかったことを抗議しています。
 例えば、東海村に住む、ある聾唖者の方は、たまたまテレビを見ていた息子から事故のことを教えられました。しかし、詳しいことや、どうしたらよいか分からず、テレビに手話と字幕があればと、思ったそうです。
 聾唖者連盟の調査では、当日、役所は避難地域にいる障害者には、ファクスも送っておらず、何の避難連絡もしていないようです。まさに、今回の事故からみれば、「障害者は勝手に死ね」というものだと思います。
 私がそう思ったのは、今回の東海村だけではなく、あの阪神大震災でも同じようなことがありました。だから、どうしても言っておきたかったのです。
 阪神大震災では、多くのボランティアが活躍し、全国から義援金や救援物資が送られました。本当に大切で立派なことでした。しかし、政府や自治体の救援活動では、障害者は無視されました。
神戸では、障害者は支援の食糧をもらっても、十分に食べられませんでした。なぜだと思いますか? 多くの仮設トイレはできましたが、車イスで入る障害者用のトイレは、ほとんどありませんでした。そのため、多くの障害者はトイレに困り、「腹八分目」どころか「腹三分目」でガマンしていました。
 そのことと今回の東海村の事故を重ねると、政府は障害者を人間としてみていないというふうに思えてなりません。障害者も健常者も安心して暮らせる社会が一番大切です。そのためにもできることから始めたいと強く思っています。お互いにがんばりましょう。 


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