991015


病院はホテルのようにきれいだが

現場にはしわ寄せばかり

大分県・看護婦 水野 洋子


 読者の皆さんお元気ですか。医療現場の看護婦よりお便りします。
 生き残り競争が厳しくなる中、私の病院では今年の新規採用はたったの四人。相も変わらぬ重労働が、一人の肩にしわ寄せされています。
 介護保険制度がスタートしようとしており、新たな利益畑を求めて、今年の五月、療養型病棟など大規模な病院の増改築が行われました。新たに病棟が完成したことはともかくとして、引っ越しはみんな有休も返上してのただ働きでした。しかも、病院の業務は休むことなく、患者さんの介護を続けながらの引っ越しだったので、現場はパニック状態。この重労働には全く泣かされてしまいました。
 そんな大変な目に合わせておきながら、何の報酬もありません。それどころか、夏のボーナスはカットされてしまったのです。どんなに一生懸命がんばっても、がんばりようがありません。みんなしらけきっています。この分だと、冬のボーナスだってどうなることでしょうか。むしろしらけを通りこして、不安にさえなります。
 新しく増築された病棟は、院内の至るところに観葉植物が置かれ、まるでホテルのロビーのようです。にもかかわらず、看護婦の仕事には配慮がされておらず、トイレ、リネン室、器材室などが院内にバラバラに配置されているのです。広くなったのに加え、こんな状態ですから、歩くだけでクタクタになってしまいます。一日いったいどれほど歩いているのだろうと、万歩計をもって行き、はかってみたら何と二万歩も。
 療養型として建てられた病棟には、本人と意思の確認もなく、何と准看護婦ばかりが配属されてしまいました。准看の人たちの中には高齢者が多く、ここを辞めたとしても、次の就職が困難です。
 そんな事態をみんな知っていますから、腹にすえかねているけれど、じっと耐えているのです。怒りが爆発したらどんなにすごいことになるか分かりません。
 今回の准看問題だけでなく、医療にかかわるもの全体も厳しくなっていくでしょう。研修会に参加した時のこと、ある講師が「今後、病院も規制緩和と市場開放の波が押し寄せ、遅かれ早かれ、米国型の医療システムが導入されるようになるでしょう。そうなると中間管理職はもちろん、看護婦、医者さえ、リストラの対象となります。あなた方も今から別の道を見つけておいた方がよい」と!
 今でさえ、重労働に耐える毎日なのに、本当にそんなことになってしまうのでしょうか。みんなが怒りに思っていること、考えていることを取り上げ、声を上げたり、闘ったりすることの大切さを思わずにはいられません。 


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