991005


役員選挙に出ようかな

組合がもっとがんばらなきゃ

タクシー労働者 木下 晃


 私は、タクシーの運転手です。
 青年というには年をとりすぎ、熟年というにはあまりにも自分がかわいそうな、その中間の年頃です。タクシーに乗るようになって六年になります。
 タクシー業界はいま、とても大変です。規制緩和という「黒船」が業界全体をゆさぶっています。会社の社長も「どうなるものか」と心配していますが、よい知恵もないのでしょう、私たちタクシードライバーに「がんばれ! もっと水揚げを!」とハッパをかけるばかりです。
 県内の大手タクシー会社が、最低で半年間の運収(運賃収入)の三%、最高は一六%というボーナス査定の新しい基準を出してきました。もちろん、最高の一六%をもらうための運収は、とても普通の働き具合では到達できない額です。
 自分で言うのも変ですが、私はわりと真面目に働く運転手です。それでもどんなにがんばっても、運収は月額平均で四十三万円前後です。そんな具合ですから、うちの会社でこの新査定基準が実施されるようなことになれば、ボーナスの支給額はこれまでよりずーっと少なくなってしまいます。
 タクシー会社は規制緩和が進んでいて、料金も各社が独自に決め、すべてが「認可」から届出制になるのだそうです。タクシー業界も、弱肉強食の仁義なき闘いに突入するということなのでしょう。私たちタクシードライバーは、早くもその犠牲をこの身に押しつけられて、もがき苦しんでいます。
 駅で客待ちをしている時、運転手仲間との話題はもっぱら「もう辞めようかなあ」という話です。しかし、結論は必ずといっていいように、「それでも、次の就職口がないから辛抱するしかないよなあ」となるのです。
 半年くらい前になりますが、タクシー運転手が会社に刃物をもって乱入したという記事が、どこかの新聞に載っていました。その人の気持ちもわかるような気がするのです。
 でも最近は、私も、また同僚たちも少し変わってきました。「もう少し組合にがんばってもらおう」という話が、チラホラ出るようになったからです。
 組合の役員は会社によく思われている人ばかりで、私たちの要求があまり通りません。「がんばったが限界だった」と、毎度毎度わかったようなわからないような、意味不明の報告ばかりです。
 組合の次期役員選挙では、自分が立候補してみようかとも思うのですが、ちょっと勇気が必要です。タクシードライバーのみなさん、がんばりましょう。 


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