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10月から介護保険の申請

日増しに強まる不安と不満

福祉行政を動かす運動を

福祉ボランティア 山岡 信一


 十月から始まる介護保険の申請を前にして、高齢者を介護する家族や地域の福祉関係者から、いまだに不透明な介護保険制度への大きな不満や不安が続出しています。
 月十四万円の年金生活夫婦の妻(六十八歳)は「保険料二人分と夫のサービス利用料の負担は重すぎます。その上、病弱な私の医療費を考えると、とても生活していけません」。また、「八十六歳の母が世話になっている特別養護老人ホームの職員から『軽度の老人を預かる施設は経営が成り立たなくなる』と暗に在宅での介護を勧められた」と不満を訴えています。

疑問に答えぬ厚生省

 民生委員や福祉ボランティアとして地域福祉にかかわっている私たちには、こうした介護保険制度への住民の不満や不安の声が日増しに強くなっていくのがよく分かります。こうした市民の声に行政は、厚生省の対策の遅れを理由に何ら明確な答えを出そうとしていません。市民の制度への不満は次の六点に大別されます。
 第一は、保険料と利用料の負担増への不満。第二は、現在受けている介護サービスが低下するのではないかとの不安。第三は、要介護認定が公正に行われるかどうかへの不安。第四は、施設や在宅で思い通りのサービスが受けられるかの不安。第五は、要介護認定から外れた人への救済支援措置の遅れ。第六は、情報不足や準備体制不足への不満などです。
 さらに、介護サービスにかかる費用の不明さも大きな問題です。介護サービス報酬の仮単価が発表されましたが、ホームヘルパーの等級による報酬単価は未定で、福祉器具の貸与や住宅改造費の支給は単年なのかどうかも未定です。無年金者や低所得者への救済措置や倒産や失業などによる減免措置基準も決められていません。これではわが家の介護サービスの利用額を算出しようにもできません。

知恵と力を集めよう

 私の住む市では、八月下旬に『高齢者施策の再構築』のための中間報告が発表されました。その内容をみると、六十五歳以上の介護保険料は二千八百九十六円で、配食サービスや移送サービスなどの「横出し」「上乗せ」サービスは保険料を抑えるため三年間は行わないことにしています。
 できるだけ一般施策で対応するとして、新規事業は、(1)紙おむつ支援事業、(2)高齢者生活福祉センターを民間で設立、(3)「生活支援デイサービス」を社会福祉協議会などに委託すると発表されました。
 しかし、従来支給されてきた『寝たきり老人等の介護手当て』月額四千円はカットされました。また新規事業は、国の補助金である『在宅高齢者保健福祉支援事業費』四千五百万円を充てることになっています。市の福祉予算は、市民の負担と福祉手当てのカットで大幅な減額となり、公的責任の放棄といわれてもやむをえない状況です。
 厚生省は、介護保険の対象者を最低でも平均二十二万円程度(月額)の厚生年金を受給している老夫婦を想定しているとのこと。所得のない人に定額で保険料を負担させることに無理があります。「保険」といいながら、保険料と別に介護サービスに一割の自己負担を求めることも問題です。介護を必要としている人に、いつでもどこでも公正で公平なサービスを一律に、しかも無料で提供するのが、福祉の本来の役割です。
 それにもかかわらず、九月の市議会では誰一人「介護保険事業」の問題点を指摘するどころか、質問さえありませんでした。まさに市民とは無縁の議会。介護保険準備室の議会対策の担当職員すらあっけにとられていました。
 私たちは、こうした市民の切実な声を集め、福祉行政を動かすような市民運動を作っていくことがいま求められています。ぜひ皆さんのお知恵をお借りしたいものです。


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