990915


オウムで揺れる町だが

財政破たんを隠す市政が問題

会社員  白石 正信


 みなさん、こんにちは。今、私の郷里の田舎町は、降ってわいた大問題で大揺れです。

 それは、突然市内にオウム真理教が土地を取得していることが発覚し、信者の転居届の受理を市当局が拒否、住民のオウム追放運動が巻き起こったことがきっかけです。商店街はオウム信者への不売運動を決議、施設の監視行動へのカンパが大々的に呼びかけられています。このあり様は、一時テレビで連日のように報道されました。

 オウム真理教の犯罪行為や反対運動についての評価はともかくとして、この問題の陰に、とても見逃すことのできない問題があります。

 まず、オウムに土地を売却した不動産屋の悪徳ぶりです。

 この不動産屋がオウムに売却した土地は、バブル当時に二千万円くらいで不動産屋の手にわたったものだということです。その後の土地価格の暴落で、現在は一千万円を割っているとも言われているほどです。実際、土地の前を走る道路は幹線道路ではありませんし、市の中心部から遠く離れた場所です。周囲は田んぼどころか、雑木林しかありません。

 その土地をオウムは、なんと五千万円以上の価格で、しかも現金払いで購入したそうです。この不動産屋は、発覚後「オウムとは知らなかった」などと言っていましたが、常識的に考えて、とても信用できず、まともな商取引でないことは明らかです。

 購入したのが普通の会社なら、「原野商法」とも批判されかねなかったでしょう。しかもこの不動産屋、その後いつのまにか、市内からいずこともなく姿を消してしまいました。

 さて、オウム追放運動の今後ですが、オウム信者に出ていってもらおうと、某自治体のようにオウムから土地を再取得するとすれば、市はばく大な資金を投入しなければなりません。五千万円という購入金額から考えて、市の負担は一億円はくだらないでしょう。それらは結果的に、住民にしわ寄せされることは明らかです。

 もう一つの問題は、こうした市政の問題です。

 現在さえ、市の財政は火の車です。バブル以降、市長は年に数回しか使われないクラシック専用ホールの建設などを推し進め、市の借金を膨らませてきました。現在市財政は、県内でも最悪の部類に入っています。

 この中でもっとも利益をむさぼってきたのは、市長後援会の有力者である、ある建設会社です。

 前回の市長選では、この建設会社のライバル会社が対立候補を担ぎ、財政問題を突いてし烈な選挙戦を繰り広げました。もちろん、彼らは自分たちへの利益分配を求めて市長を攻撃したのですが。共産党も候補者をたてましたが、保守の争いにはじき飛ばされました。

 再選された市長と議会は、オウム問題をきっかけに、国に「破壊活動防止法の改正を要求する誓願書」を採択しています。与野党を問わず、保守会派はもちろん、社民・民主党系の会派もこれに賛成しました。議会はオウム問題一色で、財政問題も、最近はあまり話題になっていないようです。

 この年末には市議会の選挙が控えています。このままでは、議員候補の公約は「オウム追放」の方策を競い合うのみになってしまうでしょう。そうすれば、市民にとって肝心な財政問題は隠されてしまいかねません。オウムのことは問題ですが、もっと本質的な問題を忘れてはならないでのではないでしょうか。

 オウムをきっかけに、田舎の町が揺れています。それはオウム問題だけに終わらないような気がしています。


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