990825


真夏の夜の怪談

死んだら、社長の枕元に毎晩化けて出てやる

生活破壊する職能給導入

自動車工場労働者  青山 元


 会社は「新しい賃金・評価制度」として、またまた賃金制度の改悪をもち出してきた。

 この制度は職能給比率を一気に一〇〇%にした完全職能給制度であり、これまで十年かけて会社が徐々に進めてきた職能給の拡大をついに完成させたもので、来年一月から導入するという。

 この制度では従来生活給、功労給的側面のあった「年齢給」を廃止し、労働者の賃金を職制が「成果」で判断する「職能給」一本で決定するもので、理論的には同じ労働成果ならば二十歳の新入社員でも、五十歳のベテラン労働者でも同一賃金となる。一見、公正に見えるが、実際には中高年労働者の賃金をカットし、労働者全体の賃金を抑え込むのが狙いであることは明白である。

 しかも、査定幅は拡大し、従来のプラス・マイナス一五%からプラス・マイナス三〇%となり、職制の権限はさらに拡大した。また、夏冬の一時金も同様に「成果」による配分が追加され、労働者同士の賃金格差をさらに拡大させようとしている。

「21世紀の新賃金」?

 会社は「二十一世紀にふさわしい新しい賃金制度」「がんばれば報われる賃金」などと耳障りのよい理屈を並べ、若い労働者の一部には歓迎する声もあるが、労働者の多くは懐疑的だ。「会社がやることが俺たちによいわけはないだろう。賃金は下がるに決まっているよ」と誰もが見抜いている。

 この賃金制度の改悪で最もひどい目に会わされるのは、中高年で職制になっていない、いわゆる「落ちこぼれ組」だ。今でも低賃金なのに、今後は年齢給がなくなり、成果を上げられない「無能者」扱いで三〇%の賃金カットを食らうことになるのだ。

 思わず、自分自身の賃金を試算してみたら、当然のことだが大変な結果が出た。最悪の場合、毎月七万円の賃金カットとなるのだ。これでは家族全員真に飢え死にしなくちゃならない。会社の説明では、五年間は調整金で徐々に賃下げするので極端な賃下げはないというが、毎月十万円余りでどうして家族五人が生活できようか。

 妻は、「飢え死にしたら、社長の枕元に毎晩化けて出てやる」と冗談を言っているが、俺も並んで化けてやろうと思う。


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