990825


「全員退職」の攻撃を粉砕

闘う以外に首は守れない

電機部品工場 高杉 英憲


 電機部品を製造する工場で働いています。

 職場ではメーカーからのコストダウン要求もあって、「効率」のかけ声に押されてピリピリした雰囲気さえあります。

 いつ仕事がよそに取られるかもしれないという、業界間の競争も激しくなっています。競争が激しくなるにつれて、ますます現場へのしわ寄せも厳しくなっています。

 数カ月前に会社の経営者が代わりました。突然でした。これについて仲間うちでいろいろなうわさも流れましたが、前の社長が経営に疲れて身売りしたことだけはまちがいないようです。

 新しい社長は、組合で一時金の交渉をしている最中にメチャクチャな提案をしてきました。

 それは、いったん全員に退職願いを出させる。それを飲めば一時金と退職金を支給する。再雇用者とはあらためて労働協約を結ぶというものです。つまり全員をいったんはクビにし、再雇用といっても全員とは限らないのです。実際に、これまで休みが多い人や高齢者など、会社が勝手に必要がないと決めた人は再雇用されないといううわさまで流れました。人員削減のリストラであることは明らかです。

 また、労働協約を新たに結ぶといっても、今でさえ満足できない賃金ですが、これすら確保される保証がないのです。

職場の反発が一気に噴出

 職場は騒然となりました。組合員の会社に対する反発が一気に噴き出しました。この不況の中でいったん職を失ったら再就職は困難です。労働新聞で失業者の生々しい、本当に厳しい状況も知りました。私は職場の仲間に、これは認められない。絶対に首だけは守らないといけないと話し、仲間といっしょに組合にも強く働きかけました。

 組合との交渉の結果、会社は雇用はそのまま継続すると認めざるを得ませんでした。それだけ現場の労働者の声が強かったからです。

 

労働協約改悪で組合が妥協

 しかし、新しく出された労働協約は、労働条件を相当に悪化させる内容でした。具体的には賃金の三割ダウンです。労働災害の補償についても、これまで組合が闘って認めさせてきたものから、会社からすれば法律上果たさなければならない最低限の義務のところまでになりました。他にも有給休暇の扱いなど実にこまごましたところまで、できるだけ会社の負担を減らし、その分「労働者の自己責任」といって労働者の負担に転嫁したものまであります。

 組合は、労働協約の改悪も含めて妥結の提案をしてきました。職場には、何とか雇用は守られたという安ど感と、それにしてもひどい内容だとの複雑な思いがありました。これで会社に見切りをつけて辞める人も出てくるでしょう。

 だんだん闘わなくなって、弱くなってきた組合の力を見る思いがします。交渉の経過が組合員に十分に伝えられていないということもありました。

 闘う組合をつくること、職場の仲間が団結して闘う以外に労働条件は守られないとういう、当たり前のことですが、その大事さを痛感しています。


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