990725


海東の盛国「渤海国」を訪ねて

石川県 堂下 健一


 海東の盛国とかつて呼ばれ、繁栄を誇った渤海(ぼっかい)国の遺跡をめぐる旅に参加する機会を得ました。渤海国とは、七世紀から十世紀初頭にかけて、中国の東北地方や朝鮮半島北部、ロシア沿海州ハバロフスクあたりまでの広大な地域を支配していた国です。

 能登半島にある私の住む町には、かつて渤海国の使節がたびたび訪れていたという歴史があります。この歴史を掘り返すことによって、町おこしをしようということで、町ではさまざまな事業が計画されたり、展開されています。

 何はともあれ、まず現地を見てこよう、ということで、今回の訪中計画がもちあがり、私もその計画をお手伝いする中で、参加する機会を得たわけです。

 コースは、北京、長春(ここにある吉林省博物館には渤海国の遺跡から発掘されたものが展示されている)、延吉、敦化(延辺朝鮮族自治州・吉林省の約四分の一におよぶものが展示されている)、牡丹江(黒龍江省)、北京というものでした。

 主な遺跡は延吉市や敦化市、牡丹江市にあります。さすがに小高い土手だけではかつての宮殿跡のイメージはまったくわきませんでしたが、城壁や宮殿の柱の敷石の残っている遺跡を見たときには、その大きさが手に取るようにわかりました。また、北京では故宮を見学していましたので、その大きさの比較もできました。

 かつての宮殿跡に立った時、千二百年ぶりに里帰りしたような錯覚におそわれました。周りの山々や平原の景色は千二百年来変化することなく、時の流れもそこだけ止まっているかのようでした。

 今回の渤海国の遺跡をめぐる旅は、バスの走行距離にすれば七百キロ近く、また畑の中、水田のあぜ道、山登りもありと変化に富んだものでした。

 受け入れの地元旅行社の協力で、当初計画していた以上の史跡を見学することができ、十分な成果をあげることができました。同行していた助役(渤海国研究交流センター長)も、町史に残ると大変満足していました。

 また、全行程同行してくれた吉林省の旅行会社の王さんは渤海国に大変な興味を示し、熱心に視察するとともに、行く先々で渤海国関連の書物を購入し、勉強するんだと張り切っていました。

 訪問先では、姉妹都市の話が出たりして、町と渤海国の遺跡がある都市との、今後ますますの末永い交流が期待されます。

 今回の訪中が大きな成果を上げて終わることができ、手伝った者として大きな満足感が残りました。


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