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みんなが不安な介護保険

行政の責任は重大

ヘルパー 吉田 直美


 私は今アルバイトをしながら、週二日間ヘルパーの仕事をしています。二年前に、働いていた会社から突然解雇を言い渡されました。それをきっかけに介護の資格を取ろうと決め、昼は仕事をさがしながら、夜は介護の講習を受けるという生活が始まりました。月曜から金曜日の夜三時間、合計百三十時間の講習と実習で二カ月かかり、ヘルパー二級の資格を取りました。今は比較的安定したアルバイトをしながらの介護で生活も落ち着きましたが、講習を受けている間は仕事が見つからず、本当にきつい毎日でした。

 私が介護の仕事に就こうと思ったのにはきっかけがありました。青森の父が三年前に脳梗塞(のうこうそく)で倒れ、トイレに行くにも、お風呂に入るにも介護が必要になりました。母も高齢で、実家の姉が両親の面倒をみていました。介護の問題が他人ごとではないと思っていたら、たまたま同じ時期に、私の友人の親も倒れ、友人が大変な苦労をしていることを知りました。

 私が介護を担当している人は、病気が比較的軽い人たちです。講習では「できるだけ本人の自立心や意欲を引き出すように。そうすることが早い回復にもなります」と教えられましたが、最初は遠慮もありなかなかうまくいきませんでした。本人に必要な買い物でも最初は耳で聞いて私がメモをしていましたが、今は本人に書いてもらうようにしたり、いろいろな工夫もしています。語りかけたり、会話も多くするようにしています。何よりも、その人たちや家族に喜んでもらえるのが私にとってもうれしい一瞬です。

 私やその人たちの家族が心配していることが介護保険の導入です。役所(市)からの援助もあって今の介護制度が成り立っていますが、介護保険制度になったらどうなるんだろう。どれだけ負担が増えるんだろう。負担できるんだろうかという不安です。「本当に困りますよね」というのが家族のいつわらざる心境です。

 私は、いつかは役立つだろうと思って手話の勉強もしてきました。「障害者」の方々ともつきあいがあります。その人たちの間では「障害者」には介護保険制度は適用されず、負担も増えないと考えられています。確かに最初はそうでしょうが、私は今の政治の流れを見ていて、はたしてそうだろうか? いずれはこの人たちにも負担が押しつけられるのでは、と考えてしまいます。現に市の担当者は「今まで通りにはいきませんよ」と言っています。

 私は、介護の問題は政治の大きな責任の問題だと思いますが、介護保険制度が導入されたら大きな社会問題になると思わざるを得ません。


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