990725


デタラメなゲームセンター建設計画

不透明な行政に不満爆発

内山 裕太


 最近私たちの町では、面白くない問題が持ち上がっている。町の東の端を通っている国道沿いに大きなゲームセンターができるというのである。建坪六百坪二階建てというから、ゲームセンターとしては破格の大きさだろう。

 この問題にどう対応するのかということで、主として周辺地域の有力者たちの間で一つの動きがあり、市内の小中学校のPTAでもう一つの動きが起こっている。

 私はこのゲームセンターの予定地が含まれる地区に住んでいる。そして中学校のPTAの役員をしている。

 そういうわけで、ある会合の案内状が来た。趣旨は地区としてのゲームセンターとの協定書の審議だそうである。「おいおい、いつ誰が協定書を結ぶなんて話を決めたんだ」と思ったが、案内が来たのに黙ってると関心がないか賛成と思われかねない。それでは困るので、どういう雲行きになるのか予想もつかない中へ出かけていった。

形式だけの協定審議会

 公民館大会議室には五十人くらいの人が集まっていた。PTAや子供会の関係者もいたが、多くは地元の農家や商店、いわゆる有力者たちのようだった。同じ地域に住んではいても私にとってはあまり話をする機会のない人たちだ。地元議員さんももちろん参加していた。

 最初に区長が呼びかけの趣旨説明。最初の説明会(あまり地元の人でも知らなかった)や協定書付きで建設を認める議会への請願(満場一致の採択)を受けて、協定書の原案つくりを教育委員会(社会教育課担当)に依頼。素案ができたのでみなさんにはかるとのことであった。

 次に地元議員が、なぜ教育委員会が出てくるのかを補足説明。ただ、その説明の中で、法律的に止められないものならば無理はできない、ということを言った。その反面教師的例として、「最近○○町で、国道沿いにラブホテル進出の話があって、地元の反対の意向を受けて町が建築の許可を出さなかったが、訴訟になり地裁で負けた。いま、高裁に控訴するかどうか検討中」と言っていた。暗に、建築反対ではやれないよ、と圧力をかけるような言い方だった。

反論に紛糾する会場

 議論の冒頭に、私が発言。この会議が、誰がどういう資格で参加しているのか、ここで何かを決めることがどういう意味になるのかわからない、とただした。これでしばし紛糾。ある議員が、区民で各種組織で活動している人たちが集まって区の方針を議論しているというような解釈でいいのではないか、と区長に助け船をだした。

 次の話の途中で、私は「個人としての発言」とことわって、「私としては、建設を認めることが前提になっている協定文の文案の検討という会議なら参加できない。ゲームセンターは本質的にできない方がよい施設だ」と、当面のPTAの最低限の立場を表明しておいた。また例の議員の引き合いに出した○○町の例について、「大規模な開発などでは住民の要望が法律と整合しないのは、全国的によくある例だ。はじめから法律の枠内でというなら、こんな協議など必要ない。○○町の例は、住民側から見ると、法律上は不利でも住民の気持ちをくんで行政がよくがんばってくれた、ということになるのではないか。行政や議会はむしろ、こういう姿勢が必要なのではないか」と反論した。この発言には、後ろの方からどっと拍手がわいた。

 このあたりから、場は混迷し始めた。議会への請願書の連名者四人のうち、二人が内幕の暴露をはじめ、「なぜわれわれに一言の相談もなく、勝手にここまで話を進めたのか」と怒る。

 もう一人は「ごりがん(ごり押し)言っていてもしかたがない。せっかくこれだけの文案を用意してもらったのだから、文案検討をすすめよう」と発言。予定地近くの会社の幹部は、「われわれには会合の案内さえ来ていない。われわれには発言権はないのか」と怒る。

 会場から「請願者の四人の意見がまるで一致していないではないか。こんなことで文案の検討などできるわけがない。もういちど仕切り直すべきだ」との意見が出て、誰の目にもこの状態では協定文など詰められないのは明らかになった。

 結局この日は、何も決められずに再度練り直すとなったのだが、はからずもこういう大規模開発事業(わが町にとってはこの程度の規模でも大規模開発になるのです)の進められ方が暴露される結果となった。

PTAの腰据えた取り組みに

 行政は、建設の事前協議を受けても住民にも、議会にすら知らせない。本当に議会に知らせていないのかどうかは怪しい気もするが、議員はそう言っている。

 次に、受け入れのための協定づくりなどには裏で糸を引く。しかし例えば今回は教育委員会社会教育課が担当した(青少年の健全育成の問題が請願の趣旨だったので)が、自分たちの所管団体でもあり、この問題に深く関心を寄せるPTAに対して全く情報提供をしなかった。町づくりの哲学などという高尚な話ではなく、町づくりに住民を関わらせたくないようだ。

 しかし一方で、いわゆる有力者の中にかならず利害の対立があり、見えやすい亀裂が出てくるものだなあとも実感した。

 この日の活躍が功を奏したようで、町を歩いていると、地元に古くから住んでいる農家の人たちから話しかけられるようになった。

 PTAの連合会では、腰を据えてこの問題と取り組んでいこうといろいろの準備をしているところである。


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