990625


イマイチだが粘った春闘

一時金はがんばるぞ

機械工場労働者 岡田 光治


来年こそ定昇の制度化を

 従業員が約二百人の食品機械を製造する工場で働いています。労働組合の副委員長をしています。組合はオープンショップ制で、会社の役員を除いて従業員は皆組合員です。他と比べようもありませんが、執行部への信頼は強いほうだと思います。時には組合家族も参加できる旅行やイベントを行ったりしていることも、お互いの親交を深めることになっているようです。釣りやスキーなど、組合の中にいろんな同好会をつくり、そこでも仲間が活動しています。今は、春闘が終わり、一時金の闘争に入っています。

低い基本給に組合員の不満

 話は前後しますが、今年の春闘は満足のいくものではありませんでした。四%(約八千円)アップの要求で、結果は、その半分ちょっとで妥結しました。会社の売り上げが落ち込んでいることや、地域の労働組合の妥結額がうちよりももっと厳しいことや、新聞を目にすればリストラの記事がはんらんしています。こんな状況もあって、不満足ながらも妥結しました。「厳しいなかでよくやった」という組合員もいますが、「これじゃあメシ二、三回食っておしまいだ」という若い組合員もいました。

 実は、今年の春闘は例年と違う意味がありました。要求の四%の内の三%は定期昇給(定昇)分として要求しました。うちの会社では定昇がありません。これが世間と比べても低い基本給になっている原因です。基本給が平均で二十五万円に満たない。私には、高校と大学に通う子供がいますが、妻の収入がなければとてもやっていけません。平均給与に満たない、特に若い組合員の大きな不満になっていました。

 そこで、今年の春闘の一番の目標は、定昇分を制度化することでした。これまでと違った意味があったのです。例年は三、四回ぐらいの交渉で妥結していましたが、今年は七回の交渉を持ち、しつこく粘りました。結果は述べた通りで制度化するまでにいきませんでした。

 昨年の一時金闘争ではストライキを打ちましたが、そこまでやるべきだった、いや、会社やまわりの厳しい状況もある、そんなジレンマが今でも私のなかに残っています。組合員の気持ちも「春闘はイマイチだった」というのが正直な感想です。

 ですから、一時金闘争はそんな思いをふっきる意味でも、組合員の生活を守るうえでもがんばらないと、という気持ちでやっています。一時金は、二・七カ月を要求して交渉を重ねているところです。七月の中旬までかかるかもしれません。春闘の結果もあり「せめて一時金は」という気持ちが組合員に強くあります。一時金闘争で、同じ産別の組合二カ所がストライキを打ったという情報も耳にしました。詳しい情報をつかもうと思っています。いずれにしてもこれからです。

残業減っても仕事量は同じ

 組合では、もう一つ課題があります。労働基準法の改正で週四十時間労働が義務づけられました。もちろん労働組合の要求でもありましたが、要は残業がガタッと減ったんです。仕事量は同じ、残業はやるなで労働強化になっています。組合員の不満は、基本給が低いうえに残業が減って手取りが落ち込んだことはもちろん、今まで以上にきつくなったことです。

 会社側から見ると、今まで残業代に支払っていた五千万円が浮く計算になりました。これでは納得できません。人を入れろというのが組合の要求ですが、さもなくば浮いた分を従業員に還元すべきだというのが私の考えです。どのように還元させるかはすぐには結論は出ませんが、数年前に、会社の記念式典に使う金を削減して従業員に一時金として支給させた経験があります。闘いとしては来春闘での大きな課題です。もちろん、定昇の制度化は来年は引けません。

まともな労組でありたい

 会社との交渉で私はいつも強調します。「会社あっての組合ではなく、組合あっての会社だよ」と。組合員の生活が苦しいままに放置されたら働く意欲もなくなります。「労働組合があるからがんばれるんだ」と。

 産別全体では、個人加盟も含めて組合員が増えているそうです。個人では耐えきれないほどのひどい労働条件、雇用への不安が組合加盟への大きな原因になっていると聞きました。ひどい世の中だと腹が立ちますが、それだけに組合の役割を感じます。まともな労働組合でありたいと。


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