990605


リストラのうわさ話でいっぱい

心も乱れて事故が続出

自動車工場労働者 城山 幹雄


 この四月から、関東の工場へ半年間の予定で出向しています。この会社で二十年以上働いてきましたが、この間も円高不況やバブルなどいろいろなことで何回も出向させられてきました。そのたびに家族と離れ、きつい仕事をしてきました。今回も指名されたとき「いやだ」といったのですが、ウムをいわさずで、約三百人が出向になりました。

 自動車業界は、かつてない不況のなかで世界的な再編成・大型合併がすすんでいます。私の会社もその渦中にあります。こちらの工場もラインが閉鎖になるとか、部門ごと下請けに移転するとか、リストラのうわさ話でいっぱいです。

 S県からも応援にきている人がいますが、その工場は七月には別会社になるということです。自分の工場もラインが減らされるのではないかということで「本当に九月に帰れるのか」とても不安です。

 毎日の生活は工場と宿舎になっている独身寮との間を往復するだけで、実態はタコ部屋と同じです。寮の窓からは晴れた日には東京湾や房総半島が見えますが、昼ごろからは京浜工業地帯の宿命か、スモッグのせいで景色は見えなくなります。こんな非人間的なところによく暮らしているなあ、とつくづく考えさせられます。

 こちらの寮も、最盛期は独身者であふれていたようですが、今は人も減らされ、二人相部屋だったのが、完全に一人部屋になっています。また空いた棟はよその会社の寮となっています。それぞれ棟に詰所があり、寮監がいたのですが、それもリストラでいなくなりました。

 会社は通勤費をケチろうと出向者の車に相乗りで出勤させています。先日、出勤途中で小さな子供が急に飛び出してきました。ゆっくり走っていたからカスリ傷で済んだのですが、慣れない道で大きな事故にでもなればたいへんです。結局この「事故」も運転者が見舞いにいっただけで会社側は知らん顔です。また、先日は、寮の三階から布団を干そうとして落ちて大ケガをした仲間がいました。

 こんなことですから、気持ちがすさんで、心が乱れています。ライン作業中、頭を六針縫うケガ人も出ました。すでに二人の災害が発生しています。また、職場ではケンショウ炎の人がたくさんいます。会社は労災とは認めません。会社の圧力が強く、残念でなりません。


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