990525


賃金10%カット、ボーナスゼロ、配転…

みんな厳しい現実に直面

機械工場労働者 辻本 幸太


 今年のゴールデンウィークは父の七回忌で田舎に帰ってきました。昼過ぎからだんだんと親戚が集まり、型通りお寺さんのお経が終わった後、お膳を囲んでの遅い昼食となりました。

 私の親の年代はすでに現役を引退し、悠々自適とはいかないまでも、子や孫に囲まれてそれなりの老後をおくっているようでした。話題はもっぱら病気の話で「健保が変わっておちおち病院にも行けない」など、医療や不透明な介護保険が悩みのタネのようでした。

 しかし、私のいとこの年代は現役バリバリで、なかなか厳しい現実に直面していました。いとこの一人は最近、子供を病気で亡くしたのですが、その告別式のときに「今までは子供の病気で会社にムリを聞いてもらってたけれど、これからはどこかに飛ばされるかも」といっていました。その通りになって、和歌山へ単身赴任していました。 もう一人のいとこは「最近会社の景気が傾いてきて、この一年ボーナスがゼロ。加えて春からは賃金一〇%カットになった」ことに相当に頭にきていました。社長にも食ってかかったみたいですが、「以前なら三くだり半を投げつけて辞めていたけど、今は仕事がないものな」と、すんでのところで思いとどまったとのこと。

 別のいとこは阪神・淡路大震災で自分のアパートが傾き、一時避難所暮らしをしていましたが、若干の修理でまた元のアパートに戻ったとか。

 私の甥(おい)たちも受験生の年代になり、一人は来年大学受験、もう一人は高校受験とか。私の娘も来年は高校受験なので、母親である姉と私のかみさんが地方による学校の違い、受験教育の違いなどの話でひとしきり盛り上がっています。自分たちのころとはずいぶんと様相が違い、偏差値と競争原理にがんじがらめに縛られて、窒息しなければよいが…などと、無責任に思いながら話を聞いていました。

 法事が終わって田舎から帰り、会社勤めがまた始まって、毎日のように管理職は「コストダウン」一点張りのお説教。家に帰って新聞を読むと、腹の立つ話ばかり。確定申告で今年は税収が大幅に落ち込んだ、高額納税者が減っただと。減税で高額所得者が得をしただけじゃないか。

 昨年に比べて今年は、増税になることが決まってしまって、私としてはなんとも納得いかない。会社の決算発表も中間決算時の予想通りの決算内容。これだけ下請けや社内の労働者を締め付けていれば、そこそこの数字が出ないほうがおかしい。

 最近になって「必死に生きている」人が、自分のすぐそばにこんなにたくさんいると実感するようになってきました。それにつけても、およそこの実態に何一つこたえていない政治のありさまには目をおおうばかりです。

 この実態を招いたのも政治の責任だし、解決できるのも政治以外にないと思います。そんな力をつくり出せなかった自分たちの反省もこめて、この国のありさま・姿を変えていくのに、もうあまり残された時間はないのでは、と感じています。


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