990425


地域で工場閉鎖が相つぐ

組合活動に再挑戦するか

自動車関連工場労働者 岩瀬 義彦


 わが家には、高校、中学と小学生の子供がいる。これから数年が一番カネが必要なときなのに、私の給料は額面で四十万円強、手取りでは三十万円。ここ数年ほとんど賃金は上がっていない。年齢もあれよあれよという間に四十歳代になり、最近は仕事の疲れがたまるようになってきた。

 不況の影響は、この地域でも深刻だ。近くの会社も八月に工場を閉鎖するという。二百人の労働者が仕事を奪われることになった。どこどこの工場で季節工やパートが何人もクビになったという話が、いつも話題にのぼる。

 仕事の関係で、地域の中小零細企業の経営実態を知る機会が多い。自動車産業を支えているのは、ほんとうに小さい会社だ。十人にも満たない会社や家族だけでやっているところがたくさんある。こういうところの社長は、実際は現場作業員で、注文によっては夜も土日も働いている。まったく仕事がない日が何日も続くこともある。仕事をしても赤字ということもある。

 毎日いっしょに働いている労働者に「明日から来なくてもいいです」といえる経営者はそんなにいない。これ以上人を減らすことはできない、もう合理化できない。しかし、従業員に十分な給料を出せないのも現実である。どうやって飯を食おうかという事態になっている。ほんとうに深刻だ。生命保険を切り崩して資金ぐりしている経営者を何人も知っている。

 仕事を発注する立場にある私たちの工場でもどうしようもない。実際のところ、どうしたらいいのかわからない。

 地域社会が大きく変動している。こんな時に中小零細企業がどうしたら倒産しないですむのか、労働組合がどうしたら労働者の雇用と賃金を守れるのか、最近つくづく考えさせられる。

 労働者の賃金を下げれば、会社からみれば目前の経営はいいかもしれない。でも、将来に不安をもった労働者は自動車も買わないだろうし、買い控えするのは当たり前だ。その結果、地域の商店街では売上げが伸びない。悪循環をしているような気がする。

 私たちの労働組合は、関連業界の中では熱心に活動しているほうだと思う。賃闘の時には、毎日チラシがでることもある。今でも毎日、昼休みには執行部全員が組合事務所に集まってくる。しかし、目に見えた成果を闘いとることができず、効果的な活動になっていない。

 地域の工場が倒産し、労働者が街頭に放り出されたときでも、話を聞きに行くことすらできない。隣の工場の労働組合がどんな活動をしているのか、組合役員の顔すらわからない。

 零細や小規模な企業は、地域でまとまらなければならないことは頭ではわかっているが、地域の中に競争相手がいる。隣の地域にも競争相手がいる。労働組合も自分の企業を相手にしているだけでは、展望が見えないこともわかっている。地域で共闘しなければ…と。しかし、これには相当エネルギーを要するし、決意もいる。

 あと十数年間、クビにならないことだけを考えて職場にいるのか(クビになる前に会社がなくなる可能性も大きい)。それとも、中小企業と労働者の活路を求めて、労働組合活動に再度挑戦しようか。答えを出すにはもうしばらくかかりそうだ。


Copyright(C) The Workers' Press 1996,1997,1998,1999