990415


他人事でないブリヂストン事件
忠誠尽くしてもリストラ

電機工場労働者 浅沼 俊一朗


 ブリヂストン労働者がリストラに抗議して割腹自殺した事件は、マスコミでも大きく扱われ、職場でも大きな話題になりました。「あそこまでやるのは会社に相当の問題があったからに違いない」「管理職として会社に忠誠を尽くしてきたから、反動でああなるんだ」とか、組合でも職場でもあれこれと話題になっています。

 私の職場も大手のメーカーです。ご多分にもれずリストラばやりで、今年の春闘も早々と終了し、定昇を除けばほんのわずかばかりの賃上げでしかありません。この数年続く不況のもとで、先行きはまだ見えてきません。メーカーとしてはトップランクの企業ですが、昨年の利益目標は秋口までに半減し、売り上げ目標の大幅下方修正を余儀なくされました。

 ここしばらく提案されているリストラの中身は、自然退職をまって新規採用を抑え、人件費にかかるコストを抑制するというものです。大規模な首切りや労働条件の切り下げには至っていませんが、賃金面ではここ数年間ボーナスの支給月数が押さえられ、かなりの年収減が続いています。自宅のローンや教育にかかる費用が、以前と比較するとかなりのプレッシャーになっているのが現状です。

 こうした中で、中間管理職も深刻な状況に追いつめられています。プロ野球なみに年俸制度が取り入れられて以降、年収は単年度確保できても、再契約で年俸がアップする可能性は難しいのが現状です。

 さまざまな査定項目があり、金額でよさそうな気がしても実際はほとんどアップせず、目減りしています。

 また、中間管理職は社員と板挟みが日常で、精神的にたいへんなストレスを受けています。

 ブリヂストンで割腹自殺した人も中間管理職でしたが、あのような行動は、私の会社で起こってもおかしくない状況です。それこそ「切れる」寸前という状況でしょう。

 会社に忠誠を尽くしても、利益至上主義のもとでは単なる歯車に過ぎないのは管理職であれ、一般社員であれ同じです。むしろ管理職の立場のほうが、切れたときの反動は大きいのではないでしょうか。

 自殺した労働者は死をかけた抗議文で、「従業員をごみくずのごとく扱う経営者の感覚に、一致団結し抵抗すべきだ」と訴えていました。

 結局のところ、労働組合が原則的に闘い、企業に譲歩を迫り、労働者の働く環境を人間らしいものに変えていくことでしか、この種の悲劇はなくならないと思うのです。


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