990415


生産者交流集会に参加して
消費者パワーで農業守ろう

東京・生協組合員  杉田 明美


 私は、ある地域生協の組合員です。先日、生協が主催する生産者と消費者の交流集会がありました。生協から購入して毎日食べている、野菜やコメや肉などの生産者と直接話ができる機会はめったにないので、楽しみに参加しました。

 生産者のお話の中で印象に残ったことは、昨年の九月の台風被害の深刻さでした。長野のリンゴ生産者からは、完熟前のリンゴが五千箱分も落下し、ジュース用にまわすしかなく、五割〜八割の減収になったという話が出されました。その方は損失分を補うのに、銀行から五百万円借りたそうで、生活がとても大変だと言われていました。

 組合員からは、「困ったときにはアピールしてほしい。昨年洪水被害にあった村の救援にカンパを募ったら、多額のお金が集まった。組合員には産地を支えようという気持ちが強い」との声も出されていました。

 いま話題になっている「有機農産物」ですが、生産者からは、有機肥料の価格が化学肥料の二倍かかり価格が割高になること、自家製堆肥の熟成に時間がかかることなどが悩みとして出されていました。

 有機農産物については「農水省のガイドライン」が出され、生協でも表示がはじまっています。でも一品目の認定に、多い場合には数百カ所のほ場の現地検証が必要な場合もあり、生産者には農作業以外に、品目別・ほ場別に必要な記録を記帳するというやっかいな実務が必要になります。

 生産者からも、「認定を受けるべきか迷っている」「どこまでが有機農産物といえるのか、よくわからない。有機肥料が外国の遺伝子組み替え大豆からつくられていることもある」という指摘や、「消費者は見た目のよいものしか買わない」など、消費者への不信の声も出されていました。

 組合員からみれば値段は安いにこしたことはありませんが、「安全性」に強いこだわりがあります。ダイオキシン問題や遺伝子組み替え食品への疑問なども出され、見かけが多少悪くても「安心できる食べ物」を手に入れたいというのが、組合員の共通した思いでした。

 この交流会に参加した生産者は、地域循環型農業や無農薬、低農薬栽培などを通して、消費者に「安全でおいしい」農産物を提供し、農業を守っていこうとしている人たちですが、それでも後継者問題は深刻です。参加者の中には、二十歳代〜三十歳代の農業後継者が中心となって農事組合法人をつくって「次世代に継承できる農業をめざして」がんばっている人たちもいてほっとしましたが、若者が農業に希望がもてる社会になってほしいものです。

 交流会を通じて、消費者と生産者が、お互いの主張をぶつけあい、理解を深めあうことができたことはたいへんよかったと思います。厳しい状況の中でも、がんばっている農業者を応援し、農産物を買い支えていくことが、消費者の利益にもなることを痛感しました。

 新農業基本法が閣議決定され、今国会で法案審議がはじまるもようです。農業者も変化をよぎなくされています。消費者と生産者がしっかり手をつなぐこと―ここに日本農業を再生させる一つのヒントがあるような気がしました。


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