990315


一方的な仕打ちに怒り

契約打ち切りで「自主退職」に

大川 五郎


 私の友だちが突然、職場を解雇されました。彼女は、その会社にまる五年働いていました。彼女といっしょに解雇された人たちは、大半が派遣や下請け、協力会社の人たちです。あまりに一方的な会社のやり方に、話を聞いた私も、怒りを禁じえませんでした。

 *   *

 彼女は二十代で、三十人〜四十人の従業員の大半が中年パート女性という現場で働いていました。けっこうきつい作業もあって、若い女性が長期に働くことはあまりない職場でした。職場に派閥があって、人間関係で辞めていく人たちもいたようです。もちろん、年末年始もギリギリまで出勤を強いるなど、会社のやり方にもそうとうに問題がありました。

 彼女はそんな職場にもなじんで、まわりのみんなに何かと大切にされていました。二〜三年たつと、彼女は職場で古株にもなりましたが、労働条件はあまり改善されることもなく、少ない人数で仕事をこなすために、辞めていく人も多くなってきました。

 人員の補充もなく、彼女も「残業も多くなったし職場を辞めようか」などと当時、会ったときによくこぼしていました。

 ところが、全社的な機構改革(リストラ)の中で、彼女も社員に登用され、(実際の給与や身分はアルバイトと変わらない)職種もそれまでの現場作業から、事務職として本社勤務に変わることになりました。職種が違うために、研修などもひんぱんにやられていたようです。

 ところが、今年に入り会社は「来年の契約は結ばない」とまったく突然に、「自主退職」の通告を一方的に行ってきました。今回再契約を結ばない人はかなりの人数で、彼女もその一人になったわけです。

 もともと労務管理がたいへん複雑なシステムになっていたようですが、それにしても突然のことです。

 今回解雇となった人たちが会社と話し合いの場をもったそうですが、会社の言い分は「条件的にきつい人を残して、できるだけ再就職の条件のある人を対象にした」などと、もっともらしい理由をつけてきました。二十代といってもこの不景気と失業の中で、簡単に次の職など見つかるわけはありません。アルバイトには退職金も一切なく、期限を区切られ後は泣く泣く辞めるしかないのが実情です。

 この会社には労働組合もなく、「家族主義」をモットーにしていますがそれはうわべだけです。結局働く人たちの犠牲によって、会社の利益を守るためのリストラです。

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 たくさんの人たちが失業に苦しんでいますが、働いてる人たちの労働条件もだんだんと切り下げられてきています。「働く場所があるからまだまし」と思っても、それも保障の限りではなくなってきています。

 働く人たちによって社会が成り立っているにもかかわらず、使い捨てにされ、社会の底辺に落とし込められるような今の現状を、何とか変えないといけないと思うこのごろです。


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