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映画紹介

宋家の三姉妹

中国統一のシンボルとして描く


「ひとりは金を愛し、ひとりは権力を 愛し、ひとりは国を愛した…」

 今世紀初頭の中国。貧農に生まれた宋嘉樹は、米国に渡り宣教師となったが、帰国後、聖書の印刷を手がけたことから実業家に転身し、大富豪となる。宋嘉文は親友の孫文を助け、清朝打倒の革命運動に献身する。

 宋嘉文の長女・宋靄齢(アイレイ)、次女・宋慶齢(ケイレイ)、三女・宋美齢(ビレイ)が、この映画に登場する三姉妹である。

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 三姉妹は幼いころから米国に留学し、米国式の教育を受ける。仲のよい姉妹であったが、時代の流れは、それぞれの生きる道をわけていく。

 三姉妹が選んだパートナーは、長女は大財閥の御曹司、次女は革命家・孫文、三女は野心にもえた軍指令官・蒋介石だった。

 映画は、辛亥革命、西安事件、日中戦争、国共内戦、中華人民共和国成立など、新中国が誕生するまでの時代を生々しく再現した歴史大作だ。

 激動する時代に流されるのではなく、つねに時代の先頭に立った三姉妹の生きざまを、史実にもとづき、ありのままに描く。そして、政治的には激しく対立しつつも、お互いを思いあう姿が強調される。西安事件を経て抗日統一戦線が結成され、三姉妹がそろって戦地を慰問するシーンなどは印象的だ。

 また、日本軍の侵略が激しさを増す中、蒋介石の目の前で、学生が「一致抗日」を叫びながら焼身自殺するシーンも壮絶に描かれている。 

 日本敗戦後、内戦が再発。四九年に中華人民共和国が成立し、宋慶齢は国家副主席に就任する。内戦に敗れ台湾に逃れた蒋介石は、中華民国総統となる。宋靄齢は香港から米国に移住。以来、三人がそろって顔を合わせることはなかった。

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 この作品を監督したメイベル・チャンは、香港生まれの女性だ。映画は香港返還直前の一九九七年五月に公開。香港、中国で大きな反響を呼んだ。台湾でも公開される予定だ。

 宋慶齢は中国、宋靄齢は香港、宋美齢は台湾を象徴する存在といえよう。香港返還をなしとげた現在、中国の人びとが語る「宋家の三姉妹」は、新たな中国統一のシンボルとも思える。 

 ちなみに、美齢は百一歳になった今も、ニューヨークで健在である。

東京・岩波ホールで上映中


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