981205


政府の小手先策にうんざり

家賃下げても借り手なし

不動産経営者


 バブルの崩壊以降、全国の土地の下落に歯止めがかからず、今日まで下降し続けている。当然ながら不動産の取引は停滞し、こんにちの大型不況の大きな原因ともなった。

 さらに、昨年秋の山一証券の事実上の倒産にみられるような金融不安以降、状況はさらに悪化し続け、暗黒のトンネルから抜け出すことができないのが、こんにちの不動産関連業をとりまく状況である。

 私はそれまでの会社勤めを辞め、昨年秋から個人経営による不動産業を営むことになった。この不況の中での独立には、かなり勇気がいったが、気持ちを切り替えてスタートした。今は大手企業でも倒産、リストラ(首切り)の時代だからである。

 開業には、国民金融公庫などから融資を受け約一年を過ぎたところである。まだ、赤字経営から抜け出すまでにはなっていない。

 私たち地方の不動産業者は、ほとんどが五人以下の家族ぐるみの零細企業か個人で営業している。これらの業者はほとんどが土地、建物の売買やマンション、アパートなどの賃貸の仲介を主な営業活動にしている。

 いわゆるバブル時の土地転がしや、乱開発などにからむ投機とは無縁であった。今日の不動産不況は、こうした大手不動産業およびゼネコンらの投機活動に融資した銀行、それを後押しした政府がもたらしたものであることは明らかである。これらの影響をバブルと無縁の業者までも受けている。

 いま、市場には売れない中古マンションや分譲地がだぶつき、さらに価格下落が進んでいる。当然、新築マンション一戸建ての販売も進まず、売れ残りが目立ちはじめた。地方の都市でこのような状況だから、大都市ではもっと深刻であろう。

 また、賃貸物件もいままでは、家主さんの安定収入であったが、空き家が目立ちはじめ、賃料を下げても決まらない状況になった。このような状況はまだ当分続きそうである。

 政府、日銀は公定歩合を下げ、住宅金融公庫の融資金利を最低の二・〇%に下げ、住宅取得減税のさらなる改正の動きで住宅購入促進をうたっているが、国民の大部分はこのような小手先の政策にはうんざりしている。将来の不安が解消されない限り、安心して購入できないでいるのである。


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