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求人倍率は最悪の0.37

パン券支給に1000人の列

神奈川 日高 秀之


 「いま一番繁盛しているのはハローワークだ」。怒りに満ちた商業団体の幹部の発言。まさにその通りかもしれない。倒産と自殺者の記事が新聞に出ない日はない。業界団体や行政の中にも、失業者が増え始めていることに対する不安の発言が増え始めている。失業率が七%にも八%にもなると平然という経営者もいる。 

 県内の有効求人倍率は〇・三七倍で全国平均をはるかに下回り、失業率は全国平均の四・三%を大きく上回っている。職安には八時半の始業を前に職を求める労働者が何十人も並んでいる。

 長い深刻な不況が、私たちの生活にじわりじわりと影響を及ぼしはじめている。

 先日、与謝野通産大臣が川崎市中原区のブレーメン通り商店街(市内では活気ある商店街に一つ)を訪ねた折、「この商店街にはなぜ魚屋さんがないのですか」と聞いたそうだ。商店街の実情を知らないとぼけた発言に、商店街関係者と会話が途絶えたという記事が出ている。

 庶民の生活と大店舗の影響を知らないものが政府の産業政策のトップに座っているのだから、この不況を打開するのは困難なことか…。

 川崎市(川崎駅周辺に集中している)のホームレスは急増し、青いビニールや段ボールで包まれた手作りの簡易宿舎が公園に目立つようになってきた。

 川崎市が行っているホームレスのためのパン券(指定の店で食物と交換できる一日六百六十円のカード、酒とタバコはダメ)に毎日千人近くの人が殺到している。

 パン券用の台帳で確認して配布しているのだが、川崎市だけでなく東京や横浜など各地の失業者が、川崎市のパン券配布場所に集まってくるようになったのである。

 横浜市役所とプロ野球のベイスターズのホームグランドである横浜スタジアムの近くにある簡易宿舎の町=寿町は、昼間でも日曜日の朝でも人があふれ、独特の雰囲気をつくり出している。好景気の時の日雇い労働者として、横浜港と建設現場で働いていた人びとであるが、不況の影響を一番先に受けている。

 ここでは野宿する人が多く、寒い夜は凍死が心配されるようになってきている。

 このまま不況が続けば、年末と年度末でまた倒産増える。来春の暖かくなるころ、失業者を中心に騒ぎが起こるのでは、こんなことを思う。


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