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商品券より環境対策を

牛乳からダイオキシン検出

汚染の責任だれがとるの?

生協職員 岡田 恵美


 生協で働いています。ちまたでは、日本一の生協「コープこうべ」が赤字を計上したとか、北海道の生協でリストラされた職員が何人も他生協に派遣されるなど、生協も経営が苦しいといわれています。でも私の生協では、今年の供給伸び率一一〇%以上を見込むなど、好調です。

 アトピーなどアレルギーの増加やダイオキシン、環境ホルモン汚染などの社会不安に対し、対策を講ずることが生協の使命ともいわれています。

 環境ホルモンともいわれる内分泌かく乱化学物質についてはまだまだ分からないことが多いのですが、これまで生協で問題にしてきた農薬、合成洗剤、プラスチック類の添加剤などの成分が、問題物質としてあげられています。

 最近、カップめんの容器を紙製に切り替えるところが増えていますが、これも環境ホルモンの影響を配慮した動きだといわれています。

 しかし特に問題なのは、ダイオキシンかと思います。

 ゴミ焼却場、産廃場の近くから集荷される牛乳中のダイオキシン汚染の発表を受けて、私の生協で扱っている牛乳もダイオキシン検査を実施しています。産地によっては、ヨーロッパ基準を超すところも見つかりました。

 生協ではメーカーと交渉し、その地域から集荷した牛乳をはずすことにしましたが、はずされた牛乳はどこへ行くのでしょうか。結局はほかの牛乳と混ぜて薄められて、市販されるしかないのではないでしょうか。

 そもそもダイオキシンとは何でしょう。塩素系のプラスチックが低い温度で燃焼したときに発生する不純物で、史上最強の毒物といわれ、発ガン性や催奇形性とともに、内分泌かく乱作用も疑われています。ベトナム戦争時に枯れ葉剤として散布された除草剤に、不純物として含まれて、ベトナム人民や帰還兵の子供たちに奇形の発生が高くなったといわれる原因物質です。 脂肪に蓄積し、微量でも作用するため検出には精密な検査が必要で、牛乳一検体を調べるにも四十万円ぐらいの費用がかかります。

 ところでゴミ焼却場付近の汚染が問題になっていますが、今回の牛乳のように汚染が発見された場合、だれが責任をとるのでしょう。オランダやドイツなどでは数値によっては出荷停止となり、国が補償する体制がとられているようですが、日本ではこのような対策どころか十分な調査研究すら行われていません。一部の学者が、手弁当に近い状態で調査をしているのが現状です。

 国や行政に働きかけることも必要ですし、自分たちでできることは対策を講ずるべきでしょう。

 農薬や合成洗剤はなるべく使わない、ビニール、プラスチックは燃やさない(農業資材のビニールの野焼きなどは、ダイオキシンの発生のもとです)。特に食品のラップフイルムは燃やさないようにしましょう。しかし何より国に対策をとらせることです。子供たちの未来を考えるなら、商品券を配るより有害化学物質対策を!

参考文献

●「生殖異変 環境ホルモンの逆襲」 井口泰泉著(横浜市立大理学部教授)かもがわ出版 千二百円 

●「よくわかるダイオキシン汚染」 宮田秀明著(摂南大学薬学部教授) 合同出版 千四百円 

●「環境ホルモンから子どもを守る」マイケル・スモーレン他 コモンズ 千百円


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