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客の争奪戦で心身ボロボロ

会社に殺されてたまるか

旅行会社社員 田村 順一


 私は一年あまり前、一大決心をして長年勤めた大手旅行社を中途退職しました。現在はある小さな旅行社に勤めています。

 私が大手旅行社を辞めたのには、それなりの理由がありました。転職すれば、給料が大幅にダウンすること、将来性がある会社でもないこともわかっていて、選んだのですから。

 私がまだ若いころ入社したその大手旅行社は、やりがいのある楽しい職場でした。日々節約してためた資金で年に一度か二度の旅行を楽しみにしていたお客さんに、少しでもよい企画やサービスを提供し、喜んでもらうために、一生懸命仕事をしました。旅行してよかったと思ってもらえるように、いろいろと知恵をしぼってがんばりました。

 しかしここ十年ほどの間に、景気がどんどん悪くなり、業界の過当競争が激化したことで、急速に職場環境が変わりました。「お客さんに満足してもらえる内容などバカなこと考えている暇があったら、一人でも客をひっぱてこい」という雰囲気になり、過大なノルマをかけられ、職場はギスギスしたものに変わってしまいました。やりがいのある楽しい職場など、もはやどこにもありません。

 中間管理職になっていた私は、こうした職場でストレスがたまり、ついに体調を壊してしまいました。体調はしだいに悪化し、病院通いが続きました。不満があっても体さえ元気ならまだがんばれたと思いますが、このままだと体がダメになってしまうと思い、退職を決断しました。

 長年勤めた会社に身も心もボロボロにされ、辞めたのは私だけではありません。本当にひどい世の中になったものだと思います。

 今の小さな旅行社に移ったら、ストレスから解消されたのか、うそのように体調がよくなってきています。労働者は体が資本、会社に殺されてたまるかという気持ちで、がんばっているところです。


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