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暗い話題多くなった職場

商品券支給? バカにするな

ストをぶち抜きたい気分

中小工場労働者 磯村 貞治


 この工場に働き始めて、もう少しで勤続三十年を迎えようとしている。田舎の高校を卒業してこの会社に入り、慣れない都会での生活。それでも同年代の仲間と楽しい寮生活を送りながら、二十代半ばで職場結婚し、子供も二人できて、上の子供はもう中学一年生になる。振り返るとあっという間の出来事に思える。

 給料は中小企業では高いほうだったが、この不況が続く中では、高度成長期のような賃上げもなく、何とかこの会社が続いてくれれば、世間並みの暮らしは維持できるだろうが。

 それにしても最近の職場での話題は、暗い話が多い。  Bさんはもう少しで定年を迎えるが、子供の勤める会社が倒産し、三十代を目の前に職探しの毎日だそうだ。技術系の大学を出て、これからという時にこの不況のあおりで会社がなくなってしまった。

 F君は、今年いっぱいで田舎に帰ることになった。実家は農家だが、両親も年老いて農作業もおぼつかなく、以前から老後の心配をしていたが、結局田舎でいっしょに暮らすことになった。

 だが、将来は約束されているわけではない。田舎ではそう簡単に就職先もなく、いろいろとツテを通じて仕事を探してもらっているが、まだ確かなことは決まっていないそうだ。農業はあるにはあるが、それで生活が成り立つわけではない。

 会社も以前と比べると、活気がなくなった。会社に隣接した寮も寮生が数人しかいない。かつては三階建ての寮が満室で、一部屋に二人で住んでいたこともあるのに、今は会社の倉庫代わりに使われている。若い人たちがいないのは、本当に寂しい限りだ。

暗い話題が多いが、この原因はやっぱり今の政治にあるとしか思えない。将来に対する確かなものが見えない不安が社会を覆っている。みんなまっとうに働いても、余裕がない。将来を考えてもたくさんの蓄えがあるわけではないし、家のローンも子供の教育費もバカにならない。

 最近、みんなが頭にきているのは、商品券の支給だ。「バカにするな」と言いたい。何だかんだといっても、使うのは俺たちの税金だし、みんなに行き渡るものでもない。そんなことより、今の景気を何とかしろ!

 労働組合もかつてのような元気がない。でも細々でも権利を主張し、組合の旗を守っている。昔のようにストライキはしないが、多くの労働者は今の政府に対して、ストライキをぶち抜きたい気持ちじゃないだろうか。


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