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倒産・リストラで仲間が去った

雇用と賃上げを守る決意

松永 純一


 私の勤めている会社は一度倒産した会社で、今、再建の途上にあります。

 再建のめどはついたようですが、現場で働く労働者は、ひどい状況下に置かれているのが実態です。会社の実態を紹介します。

 会社が利益をあげるには、売り上げで利益を確保する方法と経費を減らす方法があります。今の不況では、会社は売り上げを伸ばすことができませんから、どうしても経費を減らそうとします。そして会社が真っ先に手をつける経費が、労働者の給料・ボーナス、すなわち人件費です。

 会社が倒産してから、会社は不採算部門からの撤退、工場の閉鎖を行いました。組合の了承を得てのものですが、この中で多くの人減らしが実施されました。希望退職を募り、退職者には割増退職金を払うという条件で、会社の先行きが見えないと、多くの仲間が会社を去っていきました。悲惨なのは非組合員である管理職です。管理職といっても課長クラスの人ばかりですが、指名解雇ということで、自分の意思に反して会社を去っていきました。

 工場では、希望退職の募集に応じない人には、他の工場への転勤をあっせんするという条件を提示しました。しかし、長年地元で働いている人が郷里を離れた遠方で働くはずもなく、結局、多くの工場で労働者が会社を去っていきました。

 私も希望退職への応募を考えましたが、会社に残れる間は残ろうと考えて今に至っています。今、私は会社の事務所で働いていますが、給料も安く、仕事が忙しいという実態が続いています。再建途上の会社の給料が安いというのは、ある程度しかたのないことかもしれません。しかし、昇給はなし、ボーナスも申しわけ程度しかもらえないというのは悲しいばかりです。

 仕事はとにかく、忙しいのが実態です。忙しいというと会社がもうかっていると思うかもしれませんが、実際は人減らしで人がいなくなっているからです。一人で何人分もの仕事をこなさなければなりません。実際、私のいる部署の人数は倒産前の三分の一に減っています。毎日残業の連続、休日出勤をすることもあります。会社を休むこともできません。休むと他の人に迷惑がかかるからです。

 会社にみんな不満を持っています。労働者あっての会社です。労働者の給料を安く抑え、人減らしをしても、会社の再建はできないと思います。会社は不況だから会社はもうからない、少々給料を安くしても誰も辞めていかない、辞めても安い給料で人を雇えばいいと、たかをくくっているふしがあります。

 実際、今、会社は利益を出しています。債権者への債務の弁済もめどがつき、会社に資産がたまっていく状況なのに、会社はがんばってきた労働者にそれを還元しようとはしません。

 こんな実態の会社ですが、私は職場に愛着があります。今後も今の会社でがんばっていこうと考えています。しかし、給料の安さと人減らしによる仕事の忙しさはガマンできません。組合も様子見なのが実態です。しかし、会社の中には不満がうっ積しています。

 今後、私は心ある職場の仲間を結集して、組合を動かし、会社を動かし、賃上げと職場の増員をかち取っていきたいと思います。


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