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わが社も売り上げが急減

40代への風当たり強く

ガマンするしかないのか

印刷工 菊田 孝司


 最近、毎日のように新聞やテレビで企業の倒産やリストラのニュース、特集を目にします。

 私は、現在印刷会社で働く四十七歳の男性です。同じような年代の人が働き口を求めて職安などに殺到している話を聞いたりすると、身につまされる思いになります。

 昨年までは、私が働いている会社の仕事もなんとか順調でした。世間でいわれている不況というものをあまり実感として感じられなかったのですが、今年に入って急激に売り上げが落ち込んできています。もしかすると倒産やリストラが…と不安な思いにかられてきています。

 毎日朝礼があるのですが、九月の給料日の社長の話では、「今回の給料は借金をして皆さんに払いました。冬のボーナスの引当金もまったく準備できていません。今後業績が回復しないと、何人かの人には辞めてもらわなくてはいけない事態になります。とりあえず今日からは、残業代は払えないので協力して欲しい」というような話でした。

 その日からみんな、定時の時間が過ぎても仕事が残っていると、タイムカードを押して引き続き仕事をしています。納期がある仕事なので、少ない仕事の中でも夜遅くまでやらなくてはならないこともあります。世間が好景気の時ならこんな話は通るはずもないし、誰も納得することはないと思うのですが、あまり反発する人もいません。みんな仕方がないと、あきらめて協力しているようです。

 この何年かの間に年配の人はみんな追い出され、若い年代の人に変わっています。ほとんどが二十代です。会社は年配者に辞めろとはいいませんが、露骨ないやがらせなどで辞めざるを得ない状況に追い込んできました。

 昨年、私と同世代の人が退職しましたが、彼は奥さんと子ども二人の四人家族です。この前、自分も辞めさせられるかもしれないと思って、相談の電話をしたところ、「今は仕事はないよ。いれるんなら給料が下がってもおった方がいいよ」という話でした。

 聞くところによると、退職してから職業訓練所で失業保険の給付を受けながら溶接の技術を習ったそうです。従来なら卒業すれば全員就職できたそうですが、まだ何人も就職できていないそうです。

 職安でも一つの書類に何人もの人が殺到して、なかなか見られないそうです。通勤時間が二時間くらいかかるところを紹介してもらって面接にいき、遠くてだめだといわれても「それでもいいからなんとか雇ってくれ」と頼んでもだめだったそうです。

 彼は、職業訓練所との関連でなんとか頼み込んで、ようやく今の鉄工所に就職できましたが、日給月給であり、賃金は辞めた会社の給料より数段下がるそうです。仕事もいつも定時で終わるので、残業代もないそうです。

 一家を支えていくためにはとても今の給料ではやっていけないので、毎朝仕事が始まる前に新聞配達をして、なんとか生活しているということでした。だから彼の意見は、少々のことはがまんして今の所にいたほうがいいということでした。

 職場での一番の年配者である私への会社の風当たりは強く、少しのミスも許されない緊張した毎日が続いています。こんな精神的な圧迫にいつまでたえられるのか、いっそのこと辞めてしまえと毎日思うのですが、辞めるわけにもいきません。なんとか今の仕事にくらいついていくしかないようです。


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