981015


下請けがつぎつぎつぶれる

不況の出口が見えず不安

松木 邦宏


つい最近、電気工事業で働く知人と話す機会がありました。バブルの崩壊、相つぐゼネコンの不祥事、公共事業の抑制などで、建設業界は今厳しい淘汰(とうた)の時代に入っています。

 彼もかつては多いときで四人の社員を雇っていました。当時はマンション建設など、一つの物件の電気関係全般を請け負うことで、数千万円の仕事になり、その仕事が終わるぐらいに、次の物件の仕事を取っていけば、切れることなく長期に仕事があり純益こそわずかでも、資金繰りができることで社員の面倒もみれたわけです。

 ところがこの不況になって以降、仕事量全体が大きく減少し、請負金額も考えられないほどに安値となりました。資金繰りさえどうにもならない中で、今は社員一人の自営業者として働くことになったわけです。

建設業界は何重もの下請けで構成され、トップであるゼネコンが入札を仕切り、甘いところは全部かっさらい、圧倒的多数の下請け群によって、現場の仕事が行われてきたわけです。

 ここまで景気が冷えると、仕事量そのものが大きく減少します。その結果、この業界全体に働く労働者が過剰となり、何層もの下請け群の「末端」からどんどんとそのあおりを受けてきています。

 電気工事業も力のある企業が、まずは社員、次にもっとも密接な下請けに仕事を回し生き残りをはかっています。第三次、第四次、そしてそれ以下になるとおこぼれにも預かることなく、多くがつぶされてしまいます。

今年に入って彼自身もそうですが、同業者の多くは仕事がない時期が多く、まだ社員を抱えている業者は大変な思いをしているようです。自治体の発注する公共事業も底をつき、「何月になれば仕事が出る」という甘い期待で自分自身を励まし、何とか毎月をしのいでいるという状態だそうです。

彼自身も、このままでは安定しないと、技術者として企業への就職も考え、どこか適当な先はないかと最近職安に出かけたそうです。

 行ってみると、まず人が多いのに驚いたそうです。すぐ見ることができる棚にある求職情報は古いので、求職者は直接係官と面談し、パソコンなどで最新の情報を見ながら相談します。この行列がものすごい列になっていて、とても短時間で相談などできないそうです。午前中に行っても二百人ぐらい並んでいて、一日仕事になると言っていました。また、働き盛りの年代が多いのにはびっくりしたとも言っていました。

同業者との話では「出口が見えない」ということが一番の不安になっていて、この業界から足を洗い、まったく畑違いの職種に転職を考える人が増えているそうです。

 それにしても、大銀行・大企業への手厚い保護と比較すると、この落差、格差は余りにもひどいものです。政治そのものを変える時期に本当にきていると強く感じます。


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