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職を求めて大阪・東京からも

ドヤ券に千人の行列

「仕事して暮らしたいんだ」

パート労働者  飯塚 恵美子


 労働新聞四月二十五日に「こんな不況は初めてだ」を書いた者ですが、皆さんお元気ですか。

 さて私は、また横浜市の福祉事務所でアルバイトをしています。建設や港湾で仕事につけない労働者にパン券、ドヤ(宿泊)券を発行しています。四月には毎日七百人にも来ると書きましたが、夏には千人を超える人が来ました。

 それというのも、東京都新宿区でこれまでホームレスの人びとに食事を配っていましたが、中止されました。また、大阪では釜ケ崎の労働者が職探しに集まる場所で、水をまいて追い払いました。さすがにこれは裁判になっていますが。

 このように東京、大阪で労働者を追い出すことが強行されたため、「横浜に行けば何とかなる」と言われて、ますます多くの労働者がパン券、ドヤ券を求めて来るようになっています。

 窓口の担当者の話では、東京で職を求める人たちが三日間かけて歩いて来るそうです。途中、新宿や川崎を訪ねて仕事がないか、聞きながら歩いて来ます。

 ここのドヤの人のためにシャワーなどを完備した寿生活館がありますが、ここでも大阪から来た人たちがあふれて、地元の人が使えないこともあります。

 「本当は生活館でシャワーを浴びたいんだけど、よそから来たやつらが割り込んだりして、おっかないんだ」などという声も出ています。

 また役所のロビーにはテレビがありますが、市のビデオしか放映しません。夏などはお客さんから「待ち合いの時間に高校野球ぐらい見せてほしい」という声もありますが、そうすると食事券やドヤ券を受け取った労働者もなかなか帰りません。それでテレビもビデオしか放映しません。

 いずれにしても仕事がないのが一番の問題です。誰もがイライラしています。先日も包丁を振りかざして「課長を出せ」と怒鳴り込んだ人がいました。私はびっくりしましたが、職員は割と平然として「こんなことはよくある」と言っていました。

 誰もが働きたくても働けない中で困っています。中には仕事も探さず生活保護を求める人やパン券やドヤ券を売ったりする人や酔っぱらってくる人もいますが、多くの労働者は一生懸命に仕事を求めています。

 窓口で担当者が「生活保護を受けませんか」と言っても、「生活保護が欲しいんじゃない。仕事をして暮らしたいんだ。だけど、仕事がないので、見つかるまではパン券でつないでいく」と答えています。

 心ない一部の人は、あの人たちはナマケモノだといいますが、多くの労働者はそうではありません。自由に仕事をし、自由に暮らしたい、と考えているだけです。

 窓口の非常勤は、前には福祉事務所を退職した人たちが来ていました。ところが、この不況で若い二十、三十歳代の人たちがパートで来ています。それほどに仕事がないことを象徴しています。

 私もあまり若くはないパートですので、一日も早く不況から脱することを望んでやみません。


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