980925


契約の改悪は実質首切り

職安は失業者で大混雑

パートは使い捨てか

失業者 山口ゆかり


NTTの事業化とパート労働者

 私は昨年までは、NTTのパートとして働いていた。さすが天下のNTT、パートとしては待遇はまずまずだった。だが、事業本部制にともない、部署ごとグループ会社へ移籍となった。

 社員は出向だが、パートはいったん解雇で、翌日グループ会社に雇用される形となった。それまで一カ月分出ていた夏冬のボーナスはなくなった。時間給は百円近く下がった。フルタイムのパートには出ていた退職金もなくなった。年休は毎年一日ずつ増えてきてたのに、また年十日からやり直し。

 所長は気を使って、私たちパートと何回も話し合ってくれた。何しろ、パートがごきげんを損ねて皆やめれば、会社の事務は成り立っていかないのだから。そして、全員グループ会社に移れることと、半年間だけ時給は下げないという約束を支店から取ってくれた。だが、結局時給については、その上の決裁が下りなかった。

 こんな時、労働組合は社員のことで手いっぱいでパートのことどころではない。選挙の時は、「パートの人にも協力を」と、後援会加入のお誘いはあるのだが。

 NTTは、パートは労働時間でランクづけがあった。五時間、六時間、七時間半で、ホーナスの有無、退職金の有無、社会保険への加入などが違った。しかし、時給は同じだった。

 だが、グループ会社へ移ると、社員、準社員、パートA、パートB、パートB2と分かれ、パートの中でも待遇は細かく分かれていた。それまでは自分の働く都合もあって、労働条件が違うという面もあったが、今度は、上から振り分けられた。

 これまで労働条件について情報を出し合ったり(何しろ就業規則も見せてくれたことがなかったので、お互いの情報交換がないと、とんでもないことになった)、会社の不手際でボーナスが出なかった時は、私が交渉して出してもらったこともあった。そんな話もできにくくなった。

 人間関係が難しくなってくる。もちろん、皆おとなだから、表だっての争いにはならないけれど、単純に仲良しってわけにいかなくなる。せっかく積み重ねてきた仲間意識が崩れてしまった。

「5時間でなければ更新しない」

 これまでは、契約は自動的に更新されていた。今回、今まではフルタイム(実働七時間半で正社員と同じ)だったのを五時間に変えるよう言われたのだ。もちろん仕事内容はそのままに。

 パートも長いこと続けていると、仕事は増えるし責任も出てくる。休みにくくなる。それを五時間でやるのは大変だし、賃金はずっと下がる。社会保険からもはずれる。

 会社側からすれば、単に賃金が三分の二で済むだけでなく、社会保険料の負担も無くなるのだから、ずいぶん経費削減になるわけだし、これからはパートは皆五時間にしたいそうだ。

 おまけに、同じ部署に二人パートがいるのに、来年度からは一人にするという。

 結局、五時間にしなければ、契約は更新しないと言われた。

 私は、仕事はそのままで賃金は下がり、休みにくいこの会社に見切りをつけることにした。だが、これは実質的には首切りだ。パートは使い捨ての労働力という言葉を実感する悔しい体験だった。

30秒で済ませないで

 失業認定にハローワーク(職安)に行った時、たくさんの失業者を前に職員は説明しながらぼやいた。「毎日二百五十人も新しい方がみえるんです。その認定だけでも大変な作業です」。

 確かに、ハローワークは最近いつも失業者でごった返している。認定は二十分毎の時間指定だ。つまり、何日の九時から九時二十分の間に来ること、となる。ある時間に失業者が集中しないようにだ。もちろん、指定された時間に間に合うように行ったところで、三十分や一時間は軽く待たされる。

 そして自分の名前が呼ばれると、「この間仕事はしていませんね」「はい」「では、次回はこの日時です」と、次回の用紙を渡される。

 ちょっと待ってよ。三十秒で済ませないでよ。雇用保険をもらうだけに来てるんじゃないのよ。仕事を探す相談に来てるのよ。そう叫びたいのは私だけではないだろう。


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