980925


映画紹介

宮本亜門・監督作品

BEAT

60年代の熱い沖縄を描く


 一九六〇年代、米国統治下の沖縄。

 沖縄上空をわがもの顔に飛ぶ米軍用機めがけて、米軍基地から盗みだした照明弾をぶっ放すタケシ(真木蔵人)。米兵相手のバーで働き、必死に生きるミチ(内田有紀)。その幼い娘のマリア。ヤシの木から落ちてきた不思議な少年…。この四人のふれあいが、映画のテーマだ。

 タケシとミチは恋人同士だった。しかし、ミチが米兵にレイプされ身ごもった命を生む決心をした時、タケシは去っていった。

 それから数年がたった。ミチとタケシは、波の上ストリートにある同じバーで働いている。そこに不思議な少年が現れた。いつもニコニコしている彼は、天国から落ちてきた天使かもしれない。少年を通じて、タケシとミチは再び心を通わせる。

 その時、事件が起こる。マリアが米兵にレイプされたのだ。それを止められなかったタケシは自暴自棄となり、再びミチの元を去っていく。

 その後、タケシは米軍基地の死体処理場で働く。ベトナムから次つぎに送られてくる、ウジがわいたむごたらしい死体。タケシは麻薬におぼれていった。

 映画では、テレビや冷蔵庫の登場、だっこちゃん人形、フラフープ、新幹線開通、ベトナム戦争、沖縄復帰闘争――六〇年代の沖縄を象徴するできごとが次つぎと映し出される。

 米軍統治下の沖縄――それは映画の背景である。しかし、この現実はあまりにも重く、時として映画のメインに躍りでてくる。

 この映画は沖縄で撮影され、地元の人びとがエキストラとして大勢参加している。その熱気が画面を圧倒し、作品に生き生きとした力強さを与えている。

 監督の宮本亜門は、「六〇年代の沖縄は二十世紀においていちばん活気に満ち、人びとが輝いていた時代。九〇年代に生きる人たちにも、そんな『BEAT』を感じてもらえたら」と、語っている。

 沖縄を逃げだそうとするタケシに向かって、ミチが叫ぶ。「男はいいよね、逃げればいいさ。だけど、自分からは逃げられないよ」。

 沖縄では今も、米軍基地がらみの犯罪があとを断たない。現在の沖縄の熱い闘いが、画面に重なってくる。  (K)

松竹系劇場で上映中


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