980925


バカにされてたまるか

賃金体系改悪で5万円減

労働者守る組合つくろう

タクシー運転手 吉村 富夫


 私はタクシーの運転手です。十年ぐらいこの仕事をやっていますが、ご多分にもれず不況の影響が深刻です。二、三年前なら一日に六、七万円あった水揚げ(営業収入)が、今では三万から四万円に落ち込みました。ところが、これだけ客足が遠のいているのに、規制緩和でタクシーの台数は増え続けています。

 競争が激しい分だけみんな必死で働いています。会社の中には交通違反まがいの運転をする人もいます。「おい、事故ったら終わりだぞ」と言っているんですが、そうまでしなければならない事情もわかるので、強くは言えません。

 会社は、売り上げが落ちていることを理由に、今年の春闘でついに賃金のダウンを提案してきました。職場では結構反対したんですが、結局は組合も認めてしまいました。

 新たに、賃金の体系を一類、二類、三類の三つのランクに分けてきました。どれに該当するかは、これまでの業績しだいという説明でした。同じ営業収入でもランクによって歩合給が異なったり、いろんな諸手当が複雑に混じって、正直なところ給料をもらってみるまでいくらになるのか分かりませんでした。

 そして六月の給料を手にしてびっくり。頭にきました。一番低いランクづけで、これまでより五万円も下がっていました。妻も子供もいて家族構成が同じでも、他の人には家族手当がついていて、私には出なかったり、同じように通勤していても私には通勤手当がついていませんでした。

 私は、他の人はどうだろうかと同僚に聞いたところ、やはり、私と同じ目にあった人が何十人といました。このランクで毎月の給料だけでなく、ボーナスや退職金にまで差がつけられるのです。

 私は、組合に説明してくれと言いました。そうしたら組合は、「支給額が先に決まっているから、いろんな手当を削った」と言うんです。こんなことで納得いくはずがありませんし、十七、八万円では生活ができません。私は、「会社にきちんと話してほしい。そうでなければ組合を辞める」と詰めよりました。

 すると組合は、「組合を辞めると退職金だって出るかどうかわからんぞ」と、逆に脅しのような文句です。私は、これは組合と会社がグルだなあと思いました。

 私はそれから何度も組合に話にいきました。仲のよいKさんも一緒に組合に行ってくれましたが、ラチがあかず、我慢ならずに組合に脱退届を出しました。

 その後、Kさんも脱退届けを出しました。組合は今でも「脱退は待ってくれ」の一点張りで、私たちの要求には何ひとつこたえてくれません。

 今、Kさんと相談して新しく組合をつくろうと考えています。私は、組合の役員や活動の経験があるわけではありません。

 他のタクシー会社でのもめごとを耳にもしていましたが、正直あまり関心を持ちませんでした。でも今考えると、もめている人たちの気持ちが分かるようになりました。

 たとえ首がかかっても絶対にがんばるという気持ちです。生活がかかっているのはもちろんですが、一生懸命働いているのに、バカにされてたまるかという気持ちでいっぱいです。


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