980915


女性差別、PC食器問題…「考えていない」教育委員会

影響力ある闘いやるぞ

中学校教員 今野 光郎


 「考えていない」――私たちの教員組合が何度も会合を持ち、時間をかけてまとめた要求項目に対する、市教育委員会の回答のほとんどが、これでした。

 「考えていない」ことは初めからわかっています。学校現場のさまざまな問題点や施設拡充の要望などを、市教委に「考えてほしい」からこそ交渉しているのです。それなのに「考えていない」では、まるでお話になりません。

 対市交渉の席で市教委の回答を聞きながら、怒りとともに、何ともいえないむなしさを感じてしまいました。

 それにしても、この「考えていない」という言葉は、単に組合の要求に対する拒否の言葉というだけでなく、市教委の教育に対する姿勢そのものであり、それを自ら暴露した言葉だといえます。

 たとえば、現在、男女差別の撤廃が各方面から叫ばれ、全国の学校でもさまざまな取り組みがなされています。私たちの組合でも、男女混合名簿の実施に向けた取り組みを進めていたところでした。

 ところが最近、そうした時代の流れに逆らうかのように、「女性差別は日本の文化に深く根ざした価値観だから、改めることは難しい」という内容の文章を教育次長が書き、教育委員会の機関紙に載せて市内全教員に配布したのです。

 驚いた私たちは緊急に公開質問状を出して追及しましたが、それに対しても「男女差別があることを紹介しただけだ」と答えて、平然としています。教育委員会という立場も責任もかえりみない、まったく無自覚・無反省・傍観者的な態度です。

 また、現在、環境ホルモンが出るのではないかと問題になっている、給食のPC(ポリカーボネート)食器について質問しても、「厚生省の調査結果を待って検討する」というだけで、まったく他人まかせ、お上まかせの対応です。

 つい最近、隣の市では「市民の不安を取り除く」という観点から、PCを全廃し磁器食器に切り換えることを独自に決めました。この際立った対照も、当市の「考えていない」教育委員会の姿勢を浮き彫りにしています。

 さらに、市教委は、退職校長の天下り先をつくることには非常に熱心で、「○○センター」「○○研究室」といった部署をやたらにつくっています。そのこと自体、税金のムダ遣いです。加えて、たとえば問題を抱えた生徒についての相談をどこに持っていけばよいかで現場が混乱したり、官製研修が増えて教員の多忙化が進んだり、退職校長がまるで「院政」のように現場に口を出したり、といった問題が起こっています。

 これらも、教育現場のことを「考えていない」市教委の姿勢の結果です。このような、教育についてまともに「考えていない」人びとが、教育委員会を名乗る資格があるのでしょうか。私は、こんな教育委員会もあることを全国の皆さんに知ってもらいたい、という気持ちです。

 私たちの組合では、最近「市教委がこんな姿勢では、いくら真剣に交渉してもらちがあかない。もう実力行使を進めていくしかない」「一部の闘いに頼るだけでなく、みんなで統一行動をとるなど、影響力のある闘いをしていこう」といった声がよく聞かれるようになりました。

 こうした意識の変化は、労働者の闘いにとって大きな前進だと思います。教育労働者が、いつまでも利用されるだけのお人好しであってよいはずはありません。何も「考えていない」教育委員会が、まじめにものを考えざるを得なくなるように、これからも闘い続けたいと思います。


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