980825


待望の夏休みに旅行

労働者には社会主義が一番

自動車工場労働者 中島 公介


 俺は自動車工場で働いている。工場では昼休みだというのに、ラインのわきで次の仕事の準備をしている光景が珍しくない。仕事が忙しいのでラインが動きだしたら間に合わないからだ。

 そんなんだから、有給休暇は四十日も残っている。昨年は八日使えたが、今年はまだ一日も使っていない。いや、使えないのだ。しかも祭日も休めずに働いている。夏休みさえ今までは有給だったが、それもなくなった。あんまり頭に来たので、労働基準監督署に電話してみたが、何の役にも立たなかった。

 こんなことが続いていたが、ついに待望の夏休みだ。だが、例年のことだが、休みになる前に管理職が全員に車のパンフレットを三部ずつ配って、「親類や友人に車をセールスしてこい」と言う。馬鹿ヤロー、俺は販売員じゃない。休むときには、休むんだ。だが、これも賃金の査定に入るので、悲しいけれど労働者同士が競い合うことになる。

 さて、夏休みは船旅で中国に行った。船内には免税店があり、タバコ(二百三十円のものが百五十円)や酒が安い。日頃飲めないので、オールドパーを腹いっぱい飲んでしまった。頭がまわったが、幸せだった。

 この船の船員さんは全員が中国人だった。以前は日本人が多かったそうだが、給料が高いので、中国人に替えたそうだ。船主はそうやってもうけているのか。

 中国についてから、国営企業の話を聞いた。今でも昼休みは二時間から三時間もあるという。やっぱり社会主義だと、こういうことができるのかなあ。うらやましい。だが、改革・開放による合弁企業では、労働条件が悪く、昼休みは一時間だそうだ。話してくれた人は、がんばって一時間半にしたと言っていた。

 こんな話を聞いていると、どうしても日本のことを考えてしまう。

 労働基準法も守られず、有給休暇さえまともに取れない。貧乏人は早く死ねと言わんばかりに、福祉が切り捨てられている。政府は、厚生年金の支給を六十五歳に引き上げている。だが、俺たちの定年は五十五歳で、五年間は給料が減るばかりの嘱託でがんばるとしても、後の五年間はどうやって生活したらよいのか。

 中小の下請会社にしてもコストダウンで苦しんでいる。農民には減反だ。やっぱり、労働者や農民など国民大多数は日本の社会では生きていけないんだろうなあ。

 労働組合の運動方針から「社会主義」が消えて久しいが、誰が何と言おうと、労働者には社会主義が一番だ。もう一度社会主義について、大多数の利益について考える時期がきているのではないか。北京ビールもおいしかったが、もっとおいしい青島(チンタオ)ビールを飲みながら、こんなことを考えた。また、中国に行きたいなあ。


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