980825


2割も減ったボーナス

転職するにも仕事がない

西田 栄一


 ようやく遅いボーナスが支給された。例年なら、いつごろ支給されそうだ、いくらぐらいだそうだという、いくらか期待もこめた声があちこちでささやかれるのだが、今年はまったくそういう声がなく、職場の雰囲気もなにか重苦しかった。

 まわりを見回しても、不況で住宅がたたないので人員整理をはじめた製材会社、親会社の経営不振のあおりをくらって賃金カットを余儀なくされている会社などが目につく。

 先日、アサヒ靴の再建案が新聞に出ていたが、本社員の八百人近い希望退職をつのるとのこと、希望者が少なければ指名解雇もあると書いていた。しかも退職金は六割しか支給しないとのこと。これでは泣くに泣けないと思った。

 県内にある子会社でも操業が再開されることになるそうだが、三分の一はクビになるとのこと。子会社や下請けではもっときびしい現実がある。

 昨年は、大手証券会社や銀行の倒産などが新聞で目についたが、どうも最近は身の回りで二百人とか三百人とかいう規模の会社が、いきなり全員解雇などというのが目立っているような感じがする。今朝の新聞でも、販売不振と売掛金のコゲつきで、県内にある中堅の卸会社が、自己破産申請をして二百十人の従業員を即日全員解雇したという記事が出ていた。新聞に出ないような小さな倒産や廃業などもたくさんあるから、倒産も負債総額も史上最悪を続けているのではないか。

 うちの会社でも昨年の年末あたりから、在庫調整もあるのか、仕事が少なくなってきていて、親会社のほうも業績不振でリストラをやるといわれてきて、春以降、残業も極端に少なくなっていたので、本当にボーナスが出るのかどうか、労働組合もない職場で、声も上げられない。まあ、ようやく何とか例年より遅く支給されたが、やっぱり去年より二割以上も少なかった。

 文句の一つも出るかと思ったが、結局みんな、黙ってしまう。しかたないとあきらめてしまう。以前なら、若い人は、さっさと辞めていったが、いまは転職するにも仕事がない。県内の有効求人倍率は〇・四いくつという。職安にいけば、職をさがす人でいっぱいだ。

 休憩時間の話題ではもっぱらパチンコの話が多かったが、最近はパチンコの客も少なくなっているそうだ。町を走れば、ガソリンスタンドの休廃業もめだつ。

 上司が言うことには、同じ系列のN社の仕事が秋以降はうちの会社にまわってくるので、少しは忙しくなるそうだ。仕事を減らされるN社のほうは、かなりきびしくなるだろう。そっちのほうでは、これから合理化や賃下げなどがでるのではないかと心配だ。

 これからどうなるのか。参議院選挙で自民党が負けて、小渕内閣となったが、引退しかかった元首相を大蔵大臣にかつぐしかないような、いまの日本の政治ではどうしようもないと思う。

 少なくなったボーナスをもらって、つくづく考えてしまった。


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