980825


経営苦に友人2人が自殺

大企業には融資、中小切り捨て

世の中の矛盾に腹が立つ

藤田 信子


 今年も早いもので、一年の三分の二を過ぎようとしています。殊の外暑かったこの夏も「暑い、暑い」と言いながら、あわただしく過ぎていきます。

 昨冬から春にかけて、今の不況を乗り越えきれず死を選んでしまった悲しい出来事が私の身辺で起こりました。小学・中学と共に学び、遊んだ同級生が二人、初盆を迎えたのです。改めて人の力の弱さを身にしみて思い返し、悔しいやら悲しいやら、私の力ではどうしようもない憤りを感じてペンをとりました。

 昨年暮れに、近くに住む大工さんをやっていた友人が、朝早く奥さんを車でわざわざ職場まで送って行き、その足で隣の県まで仕事に行くふりをして、誰にも気づかれないような場所で車の中に排気ガスを引き込み、こと切れていて二〜三日後に見つかったということです。

 この話を年明けに聞き、二〜三カ月後に、今度は近くでクリーニング店を営んでいた友人が、仕事場で首をつって死んでいたということでした。

 二人とも一家の大黒柱で、やっと子供にも金がかからなくなり、これから二人で自分たちの老後のためにがんばろうという時になってどうして! びっくりしたと同時に、近くに男の友達も何人もいるのに、死を選ぶ前にどうして相談しなかったのだろう。さんざん苦しんだのだろうけど、死を決意する前になんらかの手だてを考えられなかったのだろうかと、自分たちがいながらふがいのなさに申し訳なく、残念でなりません。

 残された家族はどんなにか悲しかろうと、慰めの言葉さえ出ませんでした。話によると二人とも金策に苦しんでの行動だったらしいだけに、苦しい一時期を何とか乗りきろうという気力もなくなるほど苦しんだのだろうと思うと胸がいっぱいになります。

 国は大企業、大銀行には多額の金を融資しても、中小零細企業でがんばっている自営業者の苦しみには目もくれない。つぎつぎと自ら死を選ばざるをえないところまで追い込まれていく人が、後を絶つことなく続いている今日このごろ。しみじみと世の中の矛盾に腹が立ちます。

 わが家も、ご多分に漏れません。不況のあおりをうけている繊維業界で働いている次男坊の会社は、五月が定期昇給月なのに、今年は会社側から何の説明もなく銀行に振り込まれ、明細を手にしてはじめて昇給がないのがわかりました。

 息子の怒りは想像以上でした。「ただでさえ安い賃金で一年一回の昇給を楽しみにがんばっているのに…」と、もう会社を辞めると今にも言い出すのではと、ヒヤヒヤしながら話を聞いていました。

 怒りもやっとおさまったころに、今度はボーナスがやっと一カ月分出たとはきすてるように言いながら、「会社の運営が基本的に悪いのだ」と一生懸命、今後の打開策について自分なりの考えを私に話すことによって、いく分気持ちも落ち着いたようでした。

 私は内心ホッとしながら、心の中で「今、ガンバレ、ガンバレ。へこたれずに皆と力を合わせて苦境を乗り切れ」と叫んでいました。

 今までよそ事のように聞いていた会社の倒産、経営者の自殺など暗い話が、私の足元までおよんできたのです。この次には、パァーと光が差し込むようなうれしい便りでペンをとれることを祈ります。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998