980715


弱いものいじめにあ然

難病患者苦しめる行政改革

自己負担をついに導入

佐々木 真一


 昨年九月一日から実施された医療保険制度の改悪は、患者に大幅な負担増となっている。それに追い打ちをかけるように厚生省は、本年五月一日から財政構造改革の一環として、「特定疾患治療研究事業」の対象となる約四十種類の難病患者に対し、治療費の公費負担(自己負担分を、国と都道府県が折半で負担)を改悪した。

 改悪の内容は、三十六万人といわれる難病患者を二分し、約一割の重病患者のみ引き続き全額公費負担としながら、残る九割の患者に一部自己負担を強いるもので、薬代を含む外来月二千円まで、入院月一万四千円までの定額負担となっている。

 二十六年の歴史を持つ制度の変更であるのに、一片の「お知らせ」で実施した。「まさに財政構造改革には『聖域』がないことのあかしである」との難病患者の投稿が五月二十七日の朝日新聞「論壇」に掲載された。投稿は、難病患者の生活実態、個人負担導入への反対運動、難病対策への提言と続いている。

 この投稿が掲載された日に、私は難病連(七団体約二千人で構成)と県の関係部門との話し合いに、初めて参加した。

 わが県も例にもれず、昨年から行財政改革の嵐が吹き荒れ、県の関係部門から、難病連に対する年間二十万円足らずの団体補助金がカットされる可能性があり、委託事業として予算要求するための各団体の要望書を提出するよう求められた。

 しかし結果的には、団体補助金は残ったのである。これは、各団体が提出した要望書の合計金額が、二十万円足らずの団体補助金の金額を大幅に上回った結果である。

 この結果にいたるまでに県当局は、「各団体の運営は会費でまかなうのが筋であり、補助金の増額は難しい」とか「行政に頼らず、寄付金を集める等の自主努力をしていただきたい」と発言していた。このような難病患者や家族で構成する会に対する思いやりのかけらもない言葉に対し、私は怒りを通りこしてただただあ然とするばかりだった。

 行財政改革にともなう補助金の見直しは、聖域を設けないとの旗印の下で、少額の補助金も対象となった。少額補助金の交付を受ける団体は、小規模で県に対する影響力も弱く、当局にとってはもっともカットしやすい対象である。これこそ弱い者いじめの典型であり、県に小中学生のいじめを語る資格はない。


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