980715


エネルギー

沢 路絵


一九九八年一月二十一日シェルブール港出港

積荷 高レベル放射性廃棄物ガラス個化体六十本

行先 青森県六ヶ所村

原発の中で燃やされたウラン235は

炉の中に核分裂生成物死の灰を積み上げて

フランスの再処理工場

ガラスと混ぜられてさらに純度の高い放射性廃棄物となり

今三たび日本にもどされる

崩壊熱二百八十度 発熱量二キロワット……空冷五十年間の後百四十度になってから地下深部埋設?

プルトニウム239 ネプツニウム237 アメリシウム241……

気の遠くなる半減期の頃

いったい何世代後までこの負の遺産を負わせつづけるのか

いつか誰かあるいは自然の力か 

管理のボタンをかけまちがえた時

漏れ出た放射能の行方は? 

地中に流れ水に溶け 命あるものの細胞にとどまり

それは触れることも見ることもできない

アルファ線もベータ線も

だが確かに存在しているこのエネルギーの形

被曝! ミクロの世界はわからない

因果関係はわからない わからない

だがしかしそれが無罪であることの証拠には

けっしてなりはしないのだから

だからもうこれ以上増やしたくない

プルサーマルも高速増殖炉も

地球は閉じられた系

豊かな生命あふれる唯一の惑星

大陸にも海の水にも境はない

探したい 

系の中で循環しつづけるエネルギーを

すべての生命と平和に共存できるエネルギーを!


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