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いじめから自分自身を守るには?

CAPをやってみよう

竹田 梨花


 もうすぐ夏休み。小学生を持つ私たち親にとっては、思い切り遊ばせたいと思う反面、それが心配の種でもあるものです。交通事故や水の事故もさることながら、大人から受ける暴力や子ども同士のいじめによる被害は、全くやりきれないものです。

 私たちの町でも最近、子どもへの痴漢や刃物での脅しの事件が起き、PTAによる地域パトロールを行ったりして、親たちには緊張する日々が続いています。

 昨年、母親たちの集まりの中で、たまたまCAP(Child Assault Pre-vention=子どもへの虐待防止プログラム)のボランティアがいたことから、CAPのワークショップ(講座)をやろうという計画が持ち上がりました。

 CAPは、子どもたちが自分を守るための教育プログラムで、二十年程前に米国でつくられました。いわゆる護身術のようなものとは違い、全ての人には侵せない権利=人権があること。だから、いやなこと、こわいことをされた時に「いやだ」と言うこと、あるいはその場から逃げることは、自分を守るための大事な手段だということを、役割劇を演じながら分かりやすく教えていきます。

 東京ではまだあまり例がありませんが、大阪など人権教育の進んだ地域では学校の授業でCAPのワークショップを取り入れているところもあるそうです。

 私たちの場合は、学校や保育園の友だちに声をかけて十人ほどが中心になり、地域の集会所を借りて行いました。CAPの講師は、はしゃいだり恥ずかしがったりする子どもたちの気持ちをうまくつかみながら、「こんな時はどうすればいいかな」と子どもたちと一緒に考えてくれました。

 大騒ぎしていた子どもたちでしたが、何カ月もたってから「誘拐されそうになったら、こうするんだよね」とポロっと言い出したりして、意外にちゃんと聞いていたのね、と思いました。また大人にとっても、子どもの人権や親子のかかわり方を考え直すいい機会にもなりました。その後、ワークショップは回を重ねるごとに参加者も増え、大人同士のかかわりも広がっています。

 CAPでは、いじめ、誘拐、性的虐待の三つの例を中心に教えますが、日常ではいじめにあうケースが最も多いのです。いじめる子どもたちを見ると、常に他人と比較され、急がされている姿が見えてきます。友だちをいじめることでしか発散できないストレスを抱えた子どもたちの様子には、胸が痛くなります。

 そして、その状況を作り出している大人たち(特に母親たち)自身が競争にさらされ、余裕のない生活を強いられている現実……、CAPのワークショップに取り組みながら、少しずつ「なぜそうなるのかな」と考えていければいいなと思っています。


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