980705


工場内は治外法権?

タダ働きはお断りだ

QC研修会をぶっ飛ばせ

自動車工場労働者 青島 義弘


 朝のミーティングで、組長から突然「今週の金曜日の就業後に社員会館でQC(品質管理)研修会を行いますので、全員参加してください」と告げられた。みんなで顔を見合わせて黙りこくっていると、今度は「参加できない人は申し出て下さい」ときた。

 この会社ではQC活動は自主活動とみなされ、一定の時間以外は就業時間外に無償または一律一時間二百円程度の「研修助成金」で行われている。QCといえども業務の改善が主要なテーマであり、実質的なタダ働きである。

 しかし、これを拒否するにはいささか勇気が必要だ。「昇給・昇格に悪い影響がある」と信じられているし、事実そのことを公然と吐く職制すらいる。

 隣に座っていたA君が「あの〜、その日は歯医者の予定があるんですが……」とすまなさそうに言うと、「予約日を変更しろ」と一喝だ。「体がきついんで私は帰らせてもらいます」と言う年配のBさんには、「そういうことだから年寄りはダメだといわれるんだヨ」と悪態。「自主参加なので、参加しない」という私には、「勝手なことばかり言われたんではQC活動は成り立たん」とにらみつける始末だ。

 さらに、用事があるので参加できませんという若いC君の不参加宣言もあって、組長はついにキレた。「お前たちがどんなことになっても俺は責任をとれんぞ! このことは工長にすぐ報告せにゃならん」と捨てぜりふを残して事務所に向かって歩きだした。

 こっちもキレて「おい、賃金を払わないのに働かせるとはどういう根拠だ! 労働組合や労働基準監督署に問い合わせるぞ」と言うと、開き直って「勝手にしろ。だがな、会社を囲む鉄条網の内側は、日本国憲法さえも適用されないんだ。人殺しがあっても警察でも簡単には入れないんだ」と目茶苦茶なことを言って走り去っていった。彼にとっては、この工場は日米安保下の米軍基地のように治外法権の社会らしい。

 不況に国民が苦しみ、リストラ、合理化が叫ばれる中でも、大企業はさらに大もうけを続けている。その大企業では労働者はタダ働きを強いられ、会社が過去最高の利益を上げても「独りよがりの賃上げはいけない、大企業の賃金は社会に影響が大きく、高い賃上げは零細企業の経営を圧迫する……」などという珍妙な理屈がまかり通って世間並みの賃上げを強いられているのだ。さらに、職能給や裁量労働制、年俸制の導入などの賃金体系の改悪で、実質的な賃下げが進んでいる。

 QC研修会には結局四人が不参加で、当日課長から「最も参加率の悪い組」としてイヤミを言われたそうだ。また参加した人たちから「本当は参加したくなかった」「もう少し不参加者がいたら、俺も理由をつけて断ったんだ」などの本音も聞かされた。

 私たちにもう少し力があり、そしてもう少し団結する機運があれば、状況は変わっていたかもしれない。そのための努力を続けたいと思う。


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